2015/06/21

イメージと実像とのズレをどう解消するか(学習院大)



最近の大学のHPは情報量、デザインともに力が入ったものが増えてきています。今年の5月末にリニューアルした学習院大学のHPも、そんな力の入ったHPの一つです。でもこのサイトの場合、制作物としてのクオリティよりサイトのコンセプトが興味深いです。

以下、大学プレスリリースより。

学習院大学・学習院女子大学がホームページをリニューアル -- マルチデバイスに対応、キラーコンテンツを公開 
学習院大学(東京都豊島区)および学習院女子大学(東京都新宿区)は、このたびホームページを大幅にリニューアル。それに伴い、サイトデザインを一新した。内容もより充実させ、両大学の魅力が訪問者に伝わるWebサイトとなっている。(後略) 

学習院大学HP


サイトをのぞくとビジュアルが豊富で、人の声が非常に多く載っています。また、レスポンシブデザインを取り入れており、スマホ、PCはもちろん、タブレットにも対応とのこと。学習院大は2016年に52年ぶり(!!)に新学部を開設するため、かなり気合いが入っているのが見て取れます。

でも冒頭に書いたように、このサイトで面白いのはコンセプトです。コンセプトは「ありのままの学習院大学」を伝える。これだけを聞くと、別段めずらしくもない感じですが、学習院が言うことに意味があります。

学習院といえば、言わずと知れた天皇家御用達の由緒ある学校です。そしてこの印象があまりにも強いため、一般の大学とは違う何かしら特別なイメージを持たれがちな学校です。

「ありのままの学習院大学」を伝えるというのは、まさにこのイメージを変えようとする試みです。実際、先ほどのリリースにも以下のような文章がありました。

「ありのままの学習院大学」や学生の様子を見せられるようなコンセプトとした。特にメインビジュアルでは、何気ない日常風景を見せていくことで、世間から見た「学習院」のイメージとは別のリアルで自然な学生の姿を展開。(後略)

イメージはゆっくりと蓄積しつくられるもののため、良くも悪くもすぐには変わりません。でも、大学や大学教育は日に日に変化しており、そのスピードはかつてないほどに速度を上げています。

こういった中、一部では大学のイメージに実像がそぐわなくなってきているのではないかと思います。とくに学習院のようにイメージができあがってしまっているところだと、これはより起こりやすいのかもしれません。

学習院大はこのイメージを変える(調整する?)ために、新たなブランド戦略を打つのではなく、“ありのままを伝える”という方法を取りました。

新しいイメージに上書きしても、いずれまた実像との間にズレが生じるんだから意味がない。だったら、ありのままを伝えた方がいい!という論理なのでしょうか。何にしろこれは世間が何となく抱いている学習院大のイメージより、実際の学習院大の方が魅力的であるという強い自負がないとできない方法です。

近年、ブランド戦略を積極的に展開する大学が増えてきています。しかし、結局のところ、世間が感じている自校のイメージより自校の実像が魅力的なのであれば、ただありのままを伝えるだけで十分なんですよね。

すっぴんがきれいなら、厚化粧をする必要がない。これはとても健全だけど、なかなかできないことです。学習院大の取り組みからは、そんな“あえて正攻法”のすごみを感じました。

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