2019/07/13

学びたいことが学べる、を伝える意味と効果を考える(大阪大)


学歴というものの権威が以前に比べて失われてきているせいか、偏差値が高ければそれでOKという大学の選び方は、徐々に減ってきているように感じます。代わりに増えているのが、学びたいこと、もしくは将来的に役に立つことを学ぶという、教育内容を軸にした大学選びです。とくに学びたいことを学ぶというのは、大学進学の動機として、本当は最初に来るべきもので、これに再度スポットライトが当たりつつあるのはとてもいいことのように思います。今回、この“学びたいことを学ぶ”に対して、真摯に、しかも本気で対応しようとするサイトを、大阪大学が立ち上げたので、これについて紹介します。このサイト、ガチ中のガチです。

以下、朝日新聞デジタルより。

あなたに向いている学科はこれだ 大阪大がシステム開発 
大学選びの参考にしてもらおうと、大阪大が高校生の興味・関心と向いている学部・学科をマッチングするシステムをつくった。その名も「大阪大学学問コンシェルジュ」。ホームページ(https://concierge.osaka-u.ac.jp/別ウインドウで開きます)で公開している。(後略

今回、見つけたのは「大阪大学学問コンシェルジュ」。トップページでは、阪大の各学部をイメージした、11匹のワニ博士(同大学マスコットキャラクター)が出迎えてくれます。昨今の大学特設サイトのなかでは、かなり地味な部類に入るトップページですが、逆にそのシンプルさに、広告ではなく真摯に高校生のことを考えたサイトだと感じました。
個性豊かな11匹のワニがお出迎え

このサイトがすごいのは、ユーザーの興味や適性をもとにおすすめの学部学科を紹介するだけでなく、おすすめの研究室まで伝えてくれることです。学部学科で学べる内容には、それなりの幅があります。でも研究室までいくと、学ぶテーマがピンポイントに絞られます。ここまで詳細に診断できることにびっくりしますし、具体的な教員名とともに研究室の紹介が載っているというのは、進路を考えるうえでとてもいいように思います。というのも、学部学科レベルであれば“占い結果”のように、なんとなくの参考にしかなりません。でも、研究室の具体的な活動内容を目の当たりにすると、この研究室でやっていることは自分が学びたいことなのかとか、自分であればここで何を研究するだろうかとか、自問自答できると思うのです。こういった突き詰めた表現、伝え方は、これまでの大学の広報物ではできていないことでした。

関連する研修室の開設とともに、サイトがあればそちらへのリンクも

もう一つ、このサイトのすごいところは、常にブラッシュアップしていく姿勢です。診断の設問の最後には「あなたが気になるキーワードなどを入力してください。(自由記述)」とあり、注釈でこの問いの回答は診断に影響せず、今後の参考に使うと書いてあります。また、診断結果画面の下には、大きなバナーでアンケートのお願いが貼られています。

かなり目につくバナーで、アンケートのお願いを掲載

広報活動に検証はつきものですが、ここまでしっかりとユーザーから情報収集をしようとするのは、大学の広報ツールでは珍しいように思います。とはいえ、診断の確度を上げていくには不可欠だし、この取り組みは阪大のPRというより、阪大をめざす高校生への進学サポートという意味合いが強いので、アンケートもとりやすいのかなという気がしました。

でも、進学サポートと書きましたが、やっぱりこれは強力な阪大のPRツールです。大学が伝える教育内容を、高校生が自分ごとと感じるのか、大学のPRと受け取るのかで、情報の吸収できる量も深さもまったく異なるはずです。今回の阪大のサイトは、まさに“大学の教育内容を自分ごとに変換させる装置”だと感じました。このサイトにまず来てもらうことで、情報発信の効果は何倍にも高まるはずです。ほんと重要なサイトなので、高校生に使ってもらえるよう、あの手、この手で、工夫していく必要がありそうです。

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