卒業生とのつながりをどのように生み出し育むかは、大学にとって重要な課題です。この課題の解決策としてよく取り組まれるのが、ホームカミングデイなどの卒業生向けイベントであったり、卒業生向けの広報誌であったりします。今回見つけた京都産業大学の取り組みは、これらとはまったく異なるアプローチ。でも、こういうつながりのつくり方は、とても大事な気がします。
以下、大学プレスセンターより。
京都産業大学経営学部の学生が「CM制作に学ぶメディア戦略」をテーマに卒業生と協働して学生食堂のCMを制作!
京都産業大学経営学部では、学部創立50周年を迎えた2017年より、卒業生のキャリアを生かして学生の思考の幅を広げ、学生の主体的な活動やゼミ活動の活性化を推進する「卒業生とのむすんでうみだす関係性プロジェクト」を始動。その一環として、「CM制作に学ぶメディア戦略」をテーマに、学生と映像制作業界で活躍する卒業生が協働して学生食堂のメニューCMを制作し、制作発表会を開催した。(後略)
今回、京都産業大が取り組んだのは、卒業生との協働授業です。卒業生が就職関連のイベントに呼ばれてしゃべるとか、著名な卒業生が学生の前で講演するというのは、よく耳にしますが、一緒に授業をするというのは珍しいのではないでしょうか。
授業内容は、チームにわかれて学食のメニューを紹介するCMを制作するというもの。京都産業大HPでは、授業の様子を紹介するドキュメンタリームービーと制作したCM(10秒ver.)を見ることができます。ドキュメンタリームービーを見ると自分の学生時代を思い出して懐かしい気持ちに、CMを見ると学生らしい発想やクオリティに微笑ましい気持ちになりました。
今回の取り組みは、卒業生と学生の協働プロジェクトという位置づけで、卒業生が教える側、学生が教えられる側と明確にわけていないことに面白さを感じます。卒業生に先生として来てもらう場合、立派な肩書や実績が求められるわけで、呼べる人が限られます。でも、ともに学ぶのであれば(もちろん何某かの専門性は必要ですが)、トップオブトップでなくてもいいわけで、いろいろな卒業生に声をかけることができるはずです。
さらにいうと、学生とともに学ぶ体験は卒業生に愛好心を育むことにつながるし、学生もまた卒業生の姿を見て、ゆくゆくは自分も大学と関わろうと思うかもしれない。この関係性や雰囲気というのは、オープンキャンパススタッフと高校生に似ているのかもしれませんね。あたたかな循環を生み出す可能性があります。
卒業生に授業に参加してもらうためには、平日であれば勤め先企業の許可がいるでしょうし、土日であれば休日でも参加したいと思えるメリットが必要になります。それなりにハードルは高いでしょう。しかし、卒業生とのつながりをつくるうえで、こういうアプローチは絶対にありです。
卒業生向け広報による一方的な情報発信や、ホームカミングデイによる当時(過去)のつながりの再確認からは、大学との新しい関係性はなかなか見出せません。しかし、学生との協働には、新たな発見、新たな刺激がたくさんあるでしょうし、それによって大学や学生に新たな感情を抱くようになる可能性がある。つまり、今を起点にした新たな大学との関係をつくる可能性があるように思うのです。京都産業大は、この活動をプロジェクトとして推進していくようです。どういう成果が出るか、とても興味があります。
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