大学が市民に向けて開催する講座は、たくさんありますが、普段大学との接点のない人の足を向かわせるとなると、それなりにインパクトや魅力が必要です。今回、見つけた、金沢大学の市民向け講座は、ものすごく尖っているわけではないのですが、テーマの設定がわかりやすく、これは人が来るだろうなと思う、安定感があります。正直、私も近隣に住んでいたら、けっこう行きたいです。
以下、大学プレスセンターより。
金沢大学オープンアカデミー(KOA)の第1弾となる「ビートルズ大学」が8月3日から金沢駅前で開講
金沢大学(石川県金沢市)は8月3日(土)から「金沢大学オープンアカデミー(KOA)」の第1弾「ビートルズ大学」(全7講座)を開講する。人類の文化遺産とも言える「ザ・ビートルズ」を題材とした同講座は、講師に金沢市出身のビートルズ研究家である宮永正隆氏を迎え、毎週土曜・日曜・祝日に開講。予約はHPより。各2000円(税別)で1講座より申込可。(後略)
ほら、ベタでしょ?でも、とても面白そうでしょ?ちなみに「金沢」「大学」「ビートルズ」ということで、最初はPMC(ポピュラー・ミュージック・コレクション)で有名な金沢工業大学かなと思ったのですが、そうではなく金沢大学でした。ちなみに、PMCは25万枚以上のアナログレコードを所蔵しており、ジャケットアート展を毎年やるなど、ユニークな活動をしています。
と、余談はさておき……。アカデミックなコンテンツに興味を持つ一般人はいますが、それはごく限られた一部の人たち。多くの人は、それよりもテレビの芸能ニュースのような、いわば俗っぽいことに興味を持ちます。とはいえ、大学は俗っぽいものを扱うのが、とにかく苦手。だいたいは大学らしくないと避けられるし、たまに扱うと慣れていないから妙に媚びたような押し出し方をしてしまうことも少なくありません。実際、打ち出し方が悪いと、大学の品位を低下させる恐れもあります。
こういったなか「ビートルズ」というのは、とてもいいテーマ設定のように思うのです。ポピュラーだけど、文化や教養の香りがする。それに、現在、生涯教育として公開講座を使う世代 ――退職してはいるけど、まだまだ元気な世代、のボリュームゾーンに当たる団塊の世代にとって、ビートルズは青春の1ページであり、今も根強いファンが多くいます。
金沢大は、このような強い魅力をもつ「ビートルズ」を一つの講座として扱うのではなく、「ビートルズ大学」という規模感のある教育プログラムとして、固有名詞をつけて打ち出したわけです。いくら団塊の世代の琴線に触れるテーマであっても、目立たないと認知は広がりません。そういう意味では、このネーミングは、インパクトがあるうえ、「ビートルズ」を「学ぶ」という意図も、一目瞭然でわかって秀逸です。
大学は俗っぽいことをしたくない(もしくは苦手)、でも一般の人には俗っぽいものが好きな人がたくさんいる。なら、大学が俗っぽいことをするのではなく、大学が扱ってもいい俗っぽいものとコラボしてみよう。しかも大学らしく……。金沢大の取り組みは、このような考えを模範的に具体化したものだといえます。
音楽、映画、ゲーム、漫画、アニメ、アイドル、ファッション、お笑い、などなど。さまざまなジャンルに、ビートルズのような位置づけのコンテンツがあり、そのコンテンツが青春の1ページだった世代がいます。こういったコンテンツと、どっぷりコラボするというのは、新たな生涯教育ファン獲得の一手としてアリなのではないでしょうか。ちなみに、金沢大の「ビートルズ大学」は企画第1弾とのこと、このあと何の大学が続くのかとても楽しみです(次のは「大学」とつかないかもしれないけれど)。
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