今や大学にとって国際化は、教育、研究、社会連携と並ぶ最重要課題です。各大学では、キャンパスの国際化を推進するために、また学生に国際感覚を身につけさせるために、あの手この手を繰り出しています。そんななか千葉大学が、王道ではあるけれど、ものすごく思い切った取り組みをはじめると発表しました。やるなら、これくらいやらなきゃダメなのかもしれませんね。
以下、朝日新聞デジタルより。
千葉大、海外留学を必修化 2020年度から全入学者に
国立千葉大学は24日、2020年度以降の学部・大学院の全入学者を対象に、原則として1回の海外留学を必修化すると発表した。千葉大によると、学部生は計約1万人、大学院生は計約3500人。文系・理系をとわず「全員留学」を義務付けるのは、全国の大学でも極めて先進的な取り組みだとしている。(後略)
国際系の学部では、学部単位で留学を必修化するところがちらほらありますが、全学生というのは、かなりめずらしいのではないでしょうか。しかも、千葉大は、10学部ある総合大学です。なかには医学部や薬学部、看護学部、教育学部といった国家資格の取得を念頭に置いて学ぶ学部もあり、これら学部の学生にとって留学はけっこうな負担になるように思います。
日本学生支援機構の「平成29年度協定等に基づく日本人学生留学状況調査結果」に、専攻分野別日本人留学生数と比率が載っていましたので、それをもとに下記のようなグラフをつくってみました。
そもそもの学生数に違いがあるので比率だけでは何ともいえないものの、「人文科学」が大半を占め、「保健」で6%、「教育」に関しては1%とかなり低い数値です。千葉大には「農学」に属する園芸学部がありますが、こちらも3%と低い数値です。
これら数値を見て、留学をする学生が少ない専攻分野では、そもそも留学が不要ないし重要度が低いと捉えることもできます。でも、グローバル化という言葉が野暮ったくなるくらい、社会のグローバル化が進んだ現在、どの分野であれ海外とのつながりは絶対にあります。千葉大が学部問わず全学生に留学を必修にするのも、おそらくそういう認識があるからでしょう。そう考えると「保健」や「教育」「農学」といった分野を学んでいる学生の方が、留学すると貴重な存在となり、人材としての価値が高まるのかもしれません。
千葉大の「全員留学」は、とても魅力的な取り組みです。ただ少し気になるのは、お金の問題です。記事には「新入生の授業料の見直しも検討する」とあります。現在、学生のうち2.6人に1人が奨学金を利用している状況にあります(平成28年度段階/日本学生支援機構調べ)。当然、国立大学をめざす人のなかには、学費の安さに魅力を感じている人がたくさんいるはずです。留学が必修になることで学費が高くなると、千葉大をめざしたかったのに、あきらめざる得ない受験生が出てくるかもしれません。千葉大は、この点を何かしら考慮するのでしょうか。
それに、千葉大の取り組みが注目され、あとに続けと他の国立大が留学を必修化し、次々に学費を上げていくと、困る受験生(と親)がさらに増えていきます。冒頭に書いたように国際化は大学にとって大きな使命であり、推進していくしか道はありません。でも、ぜひ奨学金の充実など経済面での支援と両輪で考えてもらえると、とてもうれしいです。何年か後に大学進学するかもしれない子どもがを持つ親として、これは切実に思います。
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