大学が取材するイベントのなかに高校生などを対象にしたコンテスト形式のものがあります。もちろんねらいは自校をアピールするためのプロモーションという意味合いが大きいのですが、これらコンテストの種類を見てみると俳句や短歌をテーマにしたものがけっこう多いんですね。
俳句にしろ、短歌にしろ、日本の代表的な文化ではあるものの、若者たちにとってなじみ深いものかというと、あまりそうとは言えません。なぜ、大学はこれらをテーマにしてコンテストをするのでしょうか?
■俳句・短歌のメリットは手軽さ!?
まず、実際にどんな大学がコンテストを行っているか見てみましょう。
・青春俳句大賞(龍谷大学)
・佛教大学小学生俳句大賞(佛教大学)
・静岡産業大学俳句コンテスト(静岡産業大学)
・現大学生百人一首(東洋大学)
・SEITO百人一首(同志社女子大学)
・全国高校生俳句大賞(神奈川大学)
・短歌コンテスト(中部大学)
うん、やっぱりけっこう多い。インターネットを使ってごくごく簡単に調べただけなので、実際はもっと多くのコンテストがあると思います。
大学側がコンテストのテーマとして俳句や短歌を選ぶのは、一つの理由として手軽さがあるように思います。それは大学側がコンテストを開催するうえで大掛かりな準備をする必要がないという意味での手軽さと、応募する側も長文をまとめる必要もなければ、調査や研究をする必要もないという手軽さ、この二つの意味での手軽さです。
さらに言うと、俳句や短歌には適度なアカデミックさがあり、大学が選ぶテーマとしてふさわしく、文学系の学部をもつ大学なら作品審査できる教員がいる可能性も高い。こういった要素から考えると非常にやりやすいんだろうなという気がします。
■なぜ若者たちは応募するのか?
いくらやりやすくても応募が集まらなかったら何の意味もありません。最初に書いたように、俳句や短歌は若者たちにとってあまりポピュラーなものではありません。やっぱり応募してくる人数もそれなりかな……と思い、再度インターネットで調べてみると、これがかなり応募していました(驚)。
たとえば、龍谷大学の青春俳句大賞だと直近の第12回の応募者総数が123,987件。佛教大学小学生俳句大賞なら同じく直近の第8回で41,921件。龍谷大は中学、高校、短大・大学など、さまざまな部門を設けており、佛大は応募対象を小学生のみに絞っています。ターゲットこそ違うものの、それぞれ相当な数です。正直、なんとなくイメージしていたより、ゼロが一つ多いという印象です(お見それしました)。
でも、どのようにして、小学生や中学生、高校生たちは、“そうだ俳句/短歌を書いて応募しよう!”という気持ちが呼び起こされるのでしょうか。自分の子どものころを振り返ってみて、まずそういう発想は出ないであろうということがアリアリとわかるので不思議でなりません。優秀賞をとったら莫大な賞金がでるならまだしも……(汚い大人の思考)。
■コンテストとは教育である!!
回を重ねるごとにコンテストの認知度があがり募集者が増えていった、というのはあると思います。でも、それにしてもやっぱり多い。なぜなのかと思い、これらコンテストのウェブサイトを再度よく見てみると、応募者個人ではなく学校を表彰する賞をつくっている大学がいくつかあることに気づきました。
学校を表彰する賞があるというのは、学校が主体となってコンテストに参加しているところが相当数あるということです。なるほど、だとすると数が多いのも頷けます。
学校が生徒に応募を呼びかけるのは、もちろんコンテストに教育的な意義を感じとっているからに違いありません。つまり、大学が主催するコンテストを小中高が自校の教育に役立てている。これはちょっと変則的な大学と小中高の教育連携です。
このように考えるなら、大学が自校のアピールだけを考えてコンテストを企画するのはあまり賢いやり方とはいえません。小中高の教育現場のニーズに合ったコンテストを開催することが成功の鍵になります。
たとえば、現在、脱ゆとり教育で小学校の図工の授業が減っているので、小学生対象の絵はがきコンテストを芸術系大学主催で開催する。そして、コンテストと並行して、同じテーマの出張講義を大学から講師を派遣して近隣の小学校で行ったり、コンテストの応募サイトに図工教育の魅力や絵はがきのつくり方を掲載したりして、コンテストをネタに図工教育をサポートできたら多くの学校で受け入れられるように思います。
今回は、大学主催の俳句や短歌のコンテストが多いなぁという漠然とした印象だけで書き出し、書きながら調べていったため長々となりました……(スミマセン)。でも、大学主催のコンテストを、小中高の教育機会として捉えるというのは、盛り上がるコンテストをつくるうえで大切なことのように感じます。
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