少子高齢化にともない、労働人口が減っていく…。この問題の解決策は、移民であったり、AIやIOTであったり、さまざまな視点から議論されています。そんななか、政府がこの解決策の一つとして本腰を入れて議論し、行動を起こそうとしているのは、なんと大学を使ったアプローチのようです。
以下、YOMIURI ONLINEより。
「学び直し教育」推進に5000億円…大幅拡充
出産・育児で退職した女性や定年退職した高齢者らがビジネスの技能を磨く「リカレント(学び直し)教育」推進のため、政府は2019年度以降に約5000億円を投入する方針を固めた。
現在の関連予算は年間100億円規模だが、大幅に増やす見通し。リカレント教育の拡充は、「人づくり革命」実現に向けて政府が今月上旬にまとめる2兆円規模の政策パッケージに明記される。(後略)
5000億円というのはどれくらいの期間で投入する額なのかわかりませんが、これまで年間100億円規模だったわけで、文字通り桁違いの予算がリカレント教育にかけられるわけです。そして今回のターゲットは、漠然と社会人全般ではなく「出産・育児で退職した女性」と「定年退職した高齢者」に絞られているところも注目です。
拙書『定年進学のすすめ』の制作を皮切りに、これまでにたくさんの社会人進学者を取材してきました。そこで感じたのは、働いている人と、働いていない人では、社会人学生になるためのハードルに雲泥の差があることです。働いていない人は、学費とやる気があれば、それでほぼほぼハードルはクリアです。でも働いている人は、金銭面はもちろんのこと、会社や家族からの理解を得て、仕事を調整して時間をつくり、そのうえで勉強についていかなくてはいけないわけで非常に大変なんですね。
現在はまだリカレント教育にかかるコスト(金銭面だけでなく)の割に、バックがよくない、というか不透明過ぎるので、働いている世代には興味があっても踏ん切りがつかない人がたくさんいるように思います。こういう状況だからこそ、まずはリカレント教育を受けるハードルが低い、子育てを終えた女性や、働く意欲のある高齢者が先陣を切って学び、“リカレント教育からの就職、そして場合によってはキャリアアップ”という流れを社会に定着してもらえると、とてもいいなと思います。
でも、それとともに思うことがあります。大学の学びが充実するだけで、はたしてそういう流れは社会にできるのだろうかと。というのも、学び直しをしたママさんや高齢者がたくさんいたとしても、そういう人たちを積極的に雇う仕組みが社会や企業に十分にないように思うからです。
もちろん、優秀な人材が増えていけば、じわじわと変わる可能性はあります。しかしそれは結局、企業ひとつ一つの判断にゆだねられるわけで消極的なアプローチです。それとは別に、ママさんや高齢者に起業家教育をして、彼女ら彼らが自分たちで自分たちが働きやすい会社をつくることを合わせてやるべきではないでしょうか。
加えて、ママさんや高齢者が働きやすい環境をつくるという意味では、同じ立場の人が集まり相互扶助できるコミュニティを大学内につくったり、働き方や仕事のオペレーションについて大学が企業と組んで研究するというのもありだと思います。それに、キャリアサポートですね。これも従来の学生のものとは別のものが必要になってくるはずです。
5000億円というのは、大学にリカレント教育の講座やプログラムを単純に増やすための補助金と考えるなら潤沢です。でも、やみくもに講座やプログラムが増えたところで、社会はほとんど変わらないでしょう。大切なのは、いくつになっても、どんな立場でも、学び直すことで再度チャンスが訪れる社会を、大学がハブになってどうつくるかという視点です。この視点をもとに考えるなら、これまでリカレント教育とされていたものとはまったく異なる枠組みのものが、新しいリカレント教育として生まれる可能性だって十分あるわけです。
わたしにとって社会人教育、とくにシニアの学び直しはずっと興味があって、取材してまわっていたテーマになります。この経験はリカレント教育の今後を考えるうえで、きっと、おそらく、いや絶対に役立つと自負しています。なので興味のある大学さま、企業さまがいましたら、ぜひ意見交換させてください。よろしくお願いします!
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