正規の学生でなくても、大学の一部の授業を受けられる「科目等履修生制度」。2018年度の段階でこの制度を実施している大学は、全大学のうちおよそ85%にのぼります(大学改革支援・学位授与機構調べ)。かなりの数の大学で行われている制度なのですが、利用するのは生涯教育や資格取得するうえで必要な単位を補うためと、ごく限られた人のみという印象があります。しかし、中央大学では、ちょっと視点を変えることで、この制度を高校生向けPRに使っています。このやり方、かなり、というか大いにアリだと思うのです。
以下、リセマムより。
高校生も出願可能、中大「経済学部科目等履修生」3/26より受付
中央大学経済学部は2018年3月26日~30日、2018年度の科目等履修生の春募集を実施する。高校生は、審査料・登録料・科目履修料がすべて無料。中央大学経済学部に入学した場合、修得した単位は同学部の単位として認定される。(後略)
そう、高校生が科目等履修生制度を使うことで、中央大経済学部の授業を受けられるようにしているのです。しかも無料で、しかも単位を取得したら入学後に認定されるというオマケをつけで。
受講できるのは「経済入門」という学部の導入科目のみのようですが、これってすごくうまい使い方だと思います。今さら言うまでもないことですが、大学の学びと高校までの授業は大きく違います。「経済」なんていう授業は、そもそも高校時点ではないわけです。その未知の分野について、面白い!とか、学びたい!と感じるかどうかを、進路指導の教員のアドバイスやオープンキャンパスの体験だけで決めるのは、実際のところ不可能に近いのではないでしょうか。
そういった状況にいる高校生に、数ヶ月じっくりかけて「経済」とは何かを伝えるのは、進路を考えるうえで大きなプラスになります。とはいえ、本当は「経済」だけでなく他の学部の導入科目も幅広く受けられるといいのですが、そこまではなかなか難しいのかもしれませんね。
また、視点をぐるりと変えて、大学にとってもこの取り組みは魅力的です。まず高校生に数ヶ月に渡って大学に通ってもらえる。オープンキャンパスに一度参加するだけでも、受験生はその大学に好意を持つことが多いと言われています。長期的に通うと、大学への愛着はさらに増すはずです。
これに加え、期末試験に合格した高校生に単位を与えるというのも引きになります。高校生にとって実利となるものは、効果的なインセンティブです。その代表的なものが奨学金です。とはいえ、あからさまなインセンティブは、場合によっては大学らしくないという印象が出てしまう恐れがあります。その点、今回の“単位”は、実利的ではあるものの、自ら努力して取得するものなので、非常にクリーンなイメージがします。
このように科目等履修生制度の活用は、大学にとって絶好のPR材料になりますが、リスクもなくはありません。それは科目等履修生制度を取り入れられる授業は、ほとんどの場合、大教室での授業になります。大教室の授業は、教員の目がすみずみまで行き渡らないことをいいことに、さぼったり、遊んだりする学生が出てくる可能性が高い。もしこういった学生の姿を目の当たりにしてしまうと、科目等履修生制度を利用して大学で学ぼうと思う、意識の高い高校生はとてもガッカリするはずです。
でもまぁ、そんなことは簡単に想像がつくことなので、こうならないように教員が普段より一層気を張って授業をしそうな気もするわけで、そう思うとこれもリスクというよりメリットなのかなぁという気もしないでもないです。
とにかく、既存の制度を、ちょっと視点を変えて利用することで、受験生向けの魅力的なPRになるって、すごく面白いことのように思います。それに、科目等履修生制度の存在がイマイチ知られていない感じがするので、こういった利用法を通じて、この制度の認知が広まるとうれしいですね。この制度は、高校生はもちろん広く社会の人たちに、大学の学びを伝えるとてもいい制度なんです。
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