2018/04/09

eラーニングで磨く、大学の個性と教育・研究力(佐賀大)


前回、本ブログで大学間でのカリキュラムや教員の“相乗り”について記事を書きました。今回も引き続き同じテーマです。少しアプローチは違うものの、実際に動きはじめている大学を見つけたので、これについて取り上げていきます。

前回は若干ネガティブな視点で紹介しましたが、今回はかなりポジティブ視点です。どっちやねんという気もしないでもありませんが、どちらの視点からでも受け止められる危ういテーマなんだと思います(汗)。

以下、リセマムより。

佐賀大、サイバー大学と単位互換協定締結…eラーニング科目導入 
佐賀大学とサイバー大学は2018年4月2日、単位互換協定を締結したと発表した。佐賀大学の学生は2018年度秋学期から、サイバー大学が提供するeラーニング科目の中から希望する科目を履修し、修得した単位を卒業要件に算入できる。(後略)

今回の記事で面白いと感じたのは、佐賀大学の提携先が、いわゆる普通の大学ではなくて、通信制大学であるサイバー大学であることです。通信制大学だと場所による制限がなくなるし、受講者数についてもサーバーや試験方法等に課題はあるものの、制限があまりありません。授業のアウトソーシング先として、とても便利なように思います。

佐賀大学の場合、サイバー大学でしたが、他にもデジタルハリウッド大学や今年度新設された東京通信大学などがあるうえ、通信教育部ないし課程というかたちで通信教育に取り組んでいる大学も含めるとゴマンとあります。さらに、世界に目を向けると通信制大学や通信教育は、さらにたくさんあるわけです。これらリソースを上手く組み合わせることで、より層の厚い学びをつくり出せる可能性は十分あります。

それどころかいっそのこと、さまざまな分野の授業をデジタルコンテンツ化し、これらの制作・管理・運営する大学コンソーシアムをつくってしまってもいいように思います。

基礎教育、教養教育については、デジタルコンテンツである程度までやってしまい、各大学は自校の強みとなる分野の教育や研究にリソースを全フリしてしまう。それができれば個性が際立つわけですし、各大学が得意分野のデジタルコンテンツづくりを担当すれば、質の高いものがつくれるうえ、担当大学は自校の教育や研究の成果を広く還元&PRすることができます。

さらにこういったデジタルコンテンツのライブラリーは、社会人教育にも役立つはずです。先ほど触れたように、デジタルコンテンツにしてしまえば、受講者数にほぼ制限がありません。なら、社会人のリカレント教育の教材として、低価格で開放するということも十分可能なのではないでしょうか。

現在すでにMOOKOCWなど、社会人向けの優れたデジタルコンテンツはあります。しかし、単位取得ができ、なおかつ体系的にがっつり学べる大学横断型の取り組みというのは、今のところないように思います。

今後ますます大学経営がきびしくなるなか、自校の個性や強みとなる分野を伸ばすために他を効率化するというのは、当然やるべきことです。そして、どうせやるのであれば、大学単位でやるのではなく、もっと大きな規模でやった方が、大学業界、学生、それに社会にとっていいように思います。そして、それは大学業界の大きな変革期である“今”なら、絵空事ではなく実際にできるのではないかと、わたしは思うのです。

これからますます、大学はもちろん、わたしら大学の周囲で働くものにとってもツライ時期がやってくることは明らかです。しかし、激動だからこそできることもあるわけで、そういうことを考えると、やっぱりわくわくしてきます。

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