2014/08/09

【ほとゼロ コラム】科学者に触れるひととき


大学には公開講座をはじめ、アカデミックな世界に触れられる取り組みがたくさんあります。たしかに知らない世界に触れられるのは面白いのですが、ときに一方通行のレクチャーに退屈さを感じてしまう人もいるのではないでしょうか。そういう人に、ぜひおすすめしたいのが今回紹介する「サイエンスカフェ」です。

■サイエンスカフェとは何なのか
サイエンス、カフェ。このフレーズから何となくイメージできるかもしれませんが、これはコーヒーや紅茶なんかを飲みながら、科学者や大学教員たちと一般の人たちがサイエンスについて語らうという、なんとも知的でオサレな取り組みです。

そもそもは、1990年代後半にイギリスとフランスで同時発生的にはじまり、その後、欧州諸国、さらにはアメリカ、カナダ、ブラジルなどに広まっていったとされています。

日本で最初にはじめたと言われているのが、2004年にスタートした「科学カフェ京都」です。何度か科学カフェ京都の例会(サイエンスカフェ)に参加したことがあるのですが、ここのサイエンスカフェでは、前半がレクチャー、その後、コーヒーブレイクをはさんで、後半に講師と一般の方々が質疑応答をベースにして語り合います。

ちなみに質疑応答をベースに、というのは、誰かが講師に質問をする、その質問に講師が回答すると、その回答について誰かが意見をつけたす。そんな感じに話しが広がっていく語り合い方です。参加者たちはどん欲に質問をしていて、通常の公開講座とは違う、熱気、迫力がありました。


■サイエンスカフェで得るべきもの
サイエンスカフェの一番の魅力は何かと聞かれたら、私は講師との距離の近さを挙げたいです。

運営方針や講師の性格や考え方によって多少は変わると思うのですが、けっこうどこも講師が積極的に参加者たちと関わろうとしてくれます。そして、講師である科学者や大学教員とのコミュニケーションをとっていくと、講師の人柄であったり、思考法であったりが、少しずつ見えてきます。

以前、阪大のサイエンスカフェを取材したとき、講師役を務めていた大学教授が言いました。


「サイエンスカフェで知識を得ようと思わないこと。知識を手に入れたいのであれば、インターネットであれ、書籍であれ、情報は蔓延しています。そうではなくて、ここで伝えたいのは『科学すること』。つまり、知識をどのようにして手に入れ、それを確立させていったのか、そのプロセスを感じてもらいたい。会話をするなかで、講師である科学者が、どういう考え方や切り口でテーマとなっていることをとらえていったのか、その思考法を見て欲しい」

実はこの言葉がすごく印象的で、私がサイエンスカフェを見るときの指針になっています。それで、科学者の思考に触れられるほどの距離感こそがサイエンスカフェならではの魅力なんじゃないかと私は思うようになったのです。

研究によって得られる結果も大事ですが、過程だって同じくらい大切です。それに大学が主催する取り組みには科学に触れられるものがたくさんありますが、科学者に触れられるものはそう多くありません。さらにいうと、サイエンスカフェは参加費が無料であったり、数百円(コーヒー1杯分の値段)であったりと、かなりリーズナブルな取り組みです。

ちょっとでも興味を感じてもらえるなら、ためしに科学者とのコーヒーブレイクを楽しみに出かけてみてはいかがでしょうか。

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