大学が主催となって講演会やシンポジウムに登壇される方は大学教授や研究者、企業家、社会活動家など、いわゆる知識人・著名人がほとんどです。わざわざイベントに呼ばれるわけですから当然ですよね。でも、11月末に明治大学で開催されるイベントは、ちょっと変わっています。主役はどうもさまざまな一般の人たちのようです。
ヒューマンライブラリー開催について
今年度も横田ゼミは、ヒューマンライブラリー(以下HL)を開催します。HLとは、社会の中でマイノリティとされる方、偏見を受けやすい方を「本」として、来場者に30分間対話形式で貸出を行うイベントです。対話を通して、自分とは違った考えや価値観を知り、相互理解を深める事を目的としています。今年度は「本」の“貸出”以外にも、知的障害を持つ画家によるライブペインティングや、義足体験なども予定しています。あなたもいろいろな世界を覗いてみませんか?(後略)
ヒューマンライブラリーを少し調べてみたところ、2000年にデンマークで生まれ、社会的マイノリティへの偏見をなくすことを目的にしたイベントで。日本では明治大学以外にも駒澤大学や獨協大学でも開催実績があるようでした(サンキュー、ウィキペディア!)。
今回、明治大学で「本」として登場するのは、セクシャルマイノリティ、ホームレス、専業主夫など、かなり多種多様な人たちです。これら人たちとの会話はマイノリティとされる人たちを理解するのに役立つだけでなく、生きるとは何か、生き方とは何か、といったことを考える上でも大いに役立つように思います。
大学は学術的な知識や社会で働くうえでの基礎を身につける場であるとともに、これからの長い人生を歩いていくうえでの土台を形成する大切な場でもあります。
しかし、大学のキャリア教育は、自分の適正を知ったり、職業観を養ったりと、あくまで“仕事”に主眼に置いており、“生き方”について深く考える機会は多くありません。でも、これって片手落ちというか、すごく怖いことのように感じるんですね。
たとえば、就職活動がうまくいかなくて自殺する若者たちが時折ニュースで取り上げられます。こういったことが起こる大きな要因は、大学を卒業したら働かなくてはいけないことが“常識”になっていて、それがプレッシャーになっているからのように思うんです。
もちろん、大学を卒業したら働きなさいよ、とは思います。でも、人それぞれいろいろな人生があるわけで、卒業後すぐ働かない人生があっても別に全否定されるゆわれはないわけです。しかし、今の仕事一辺倒のキャリア教育だと、これがうまく伝えられていません。仕事については伝えられているけど、“生き方”についてはぜんぜんそうではないのです。
ヒューマンライブラリーは、そんなキャリア教育の抜けている部分を埋めるのに、とても有用なイベントだと感じます。これからの社会が、もっと柔軟に、もっとおもしろくなっていくために、こういった“生き方”について考える取り組みが、今のキャリア教育と同じくらい熱心に各大学で取り組まれるといいな、そんなことをちょっと本気で思ったりします。
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