大学には社会人進学以外にも、聴講生制度や科目等履修生制度など、一般の人が授業を受けられる仕組みがいくつかあります。とはいえ、これら制度を使って授業を受ける一般人は、大規模な授業であっても一人か二人まぎれているぐらいです。そんななか、多摩大学のリレー講座はひと味違うよう。かなりたくさんの一般人が学生たちと学んでいるみたいです。
多摩地域の団塊の世代400名が毎週、多摩大学に集い、脳力(のうりき)を鍛える“多摩大学寺島実郎監修リレー講座「現代世界解析講座VIII」”
多摩大学学長の寺島実郎が監修する“多摩大学リレー講座「現代世界解析講座」”が今年度で8年目を迎え、受講者の大勢を占める団塊の世代の延べ受講者数が88,000人を超えた。時代とともに併走したいという大学の使命を意図した講座は、確実に進化・定着している。(後略)
リンク先の記事を読むと、一般人300名と在学生200名が同じ教室で机を並べて学んでいるとのこと。一般人と学生を足すと500名、かなりの人気講座なんでしょう。
それで、私がこの講座に面白さを感じたのは、一般人の多さではなく、学生と一般人がだいたい同じくらいの比率という点です。
それで、私がこの講座に面白さを感じたのは、一般人の多さではなく、学生と一般人がだいたい同じくらいの比率という点です。
大勢の一般人が大学で学ぶだけなら、人気のある大学公開講座であったり、シンポジウムなんかでありうることです。しかし、大学公開講座やシンポジウムは主な対象が一般人になるため、そこにはほとんど学生がいません。一般人と学生が同じくらいの比率で学ぶというのは、そうそうないように思うのです。
とくに今回の講座に参加する一般人は“団塊の世代”が中心とのこと。団塊の世代は学生と年が離れており、なかなか取っ付きにくい世代です。もしこれが数名の団塊の世代しか参加していない通常の授業なら、なかなか交流は生まれないように思います。
しかし、今回は人数の比率がまぁまぁ同じ。こうなると団塊の世代も積極的に前に出てくるだろうし、人数も多いので、若者たちとの接点が否が応でも生まれてくるように思います。こういう環境はこれまで見たことがないので、実際どんな感じなのかわかりませんが、おそらくかなり刺激的な教育環境なんじゃないでしょうか。
また、以前、私は『定年進学のすすめ』という書籍をつくるなかで、定年後(ないし定年間近)に大学に通う社会人学生を取材して回ってことがあります。そのなかで、定年退職者が大学に進学したとき、「何を学ぶか」「いかにして学ぶか」とともに、「学んだことをいかにして使うか」が大事なテーマなのだと感じました。これは卒業後社会に出る若い学生や、キャリアアップのために進学する社会人にはない、定年退職者特有の悩みです。
団塊の世代が大量に集まり、若い学生と交流をもてる(たぶんですが…)、そんな環境で学べるこの講座は、団塊の世代が“学びの次”を考えるのに、ふさわしい環境なように思えます。
2018年以降、18歳人口が急激に減っていくため、一般人を積極的に迎え入れようとする大学がたくさん出てくるでしょう。そうなったとき、時間もお金もある定年退職者(ないし定年間近の人)は有力なターゲットになるはずです。
定年退職者と若い学生が互いに刺激を受け合って学べる教育環境をつくりだせるよう、今から一部の講座を使って実験してみる。多摩大の取り組みには、地域貢献という側面とは別に、そんな側面もあるのかもしれません。
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