2016/06/11

M化する学生たちに見る、大学広報の分岐点(近大)


前回「近大の新学部広告のウラ側を想像すると、ジワジワすごい」という記事を書いてすぐ、「近大、攻めの広報の理由」というウェブ記事を読みました。記事によると、私がアレコレ熱く語った国際学部の広告は、電通の若手クリエイターに一任してつくったとのこと。勝手に想像し、勝手語って、恥ずかしいったらありゃしない。でもまぁ、すべてを任すというのも、ある意味ではすごいのかもしれませんね。

で、こんなことがあったにも関わらず、今回も近大の国際学部に関わる話を書きます。前回の記事が長くなり触れられなかったのですが、この広告にある「どSすぎるカリキュラム〜」というフレーズが、これからの大学広報を考えるうえで、とてもいいヒントになるように感じたからです。

ではなぜそう思ったのか。きっかけは、つい最近とある大学で教員の方と話しているときに「ゆとり教育が終わって以降、学生たちはどんどんM化してきている」という話を聞いたことです。M化というのは、厳しい内容の授業を受けたがったり、怒ってもらいたがったりするということ。言わずもがなですが、性癖のことではありません。

最近よく若い人たちの会話に“意識高い”とか“意識高い系”といった言葉が出てきますが、こういう言葉が出てくるのも学生のM化のあらわれの一端なのかなぁという気がします。

私が学生だったころは先輩や友達から情報をもらい、なるべくラクな授業を選ぶのが当たり前でした。ごくたまに勉強が好きな人もいましたが、そういう人も興味のある特定の分野を学ぶのが好きなのであって、厳しく教えられること自体が好きなわけではありませんでした。そういう意味では、私の学生時分と今の学生って、かなりマインドが違うんでしょう。

でも、今の学生がM化するのはわからなくもないのです。社会に閉塞感が漂っていて、情報があふれている。そのため、知らないけどもしかしたら、という期待を抱かせてくれるものなんてほぼなく、“うまい話なんてあるわけがない”と、みんな感覚的に理解してしまっているんだと思います。

かなり唐突な例ですが、ライザップなんかがいい例です。値段の高さやしんどさという意味では敷居の高いダイエット法です。でも、その敷居の高さが、そのまま説得力になっていて、大いにウケている。これまでのダイエットは“ラクしてやせる”を全面に押し出しているものばかりでした。でも、消費者は“うまい話なんてあるわけがない”ことに気づいているから、しんどくても納得できるものを選ぶようになってきている。

M化した学生というのは、まさにこの感覚なんじゃないでしょうか。“うまい話なんてあるわけがない”だから、社会に出るまでの間にちゃんとしんどい思いをして自分を鍛えておこう…。この感覚は、日本経済が大きく上向かないかぎり、今後さらに広まっていくように思います。

そしてこの感覚は学生だけでなく、高校生にもある程度当てはまるはずです。しかし、今の大学広報がこれとマッチしているのかというと、あまりそうとはいえません。ほとんどの大学では、昔と変わらず“ラクしてやせるダイエット”をアピールしています。そんななかで「どSすぎるカリキュラム〜」を持ってきた近大の感覚は鋭いなぁと思ったのですが、でもこれ電通の若手クリエイターたちだけで考えた案だったんだよなぁ…。

ここまで書いていて締めが微妙な感じなのですが、でも今後の大学広報では、いかにSな大学なのか、それはどんなSっぷりなのかを効果的に伝えることが重要になっていくはずです。おそらくここを伝えないと、広報に説得力が出てこないんじゃないでしょうか。そして、これはアピールポイントがラクから苦に180度変わることを意味します。何をどう訴求すべきか、早急に整理しておいたほうがいいのかもしれませんね。

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