私が大学広報の仕事をはじめたころは、大学のムービーというと説明的でごてごてしていて、まさに“資料”といった感じでした。しかし、現在は洗練され、どこかのバンドのミュージックビデオのように美しいものが増えています。
今回、見つけた東京大学の大学紹介ビデオ「UTokyo/Society」は、まさにそんなイケテル大学ムービーのひとつです。さらにそれだけじゃなく、このビデオはすごくチャレンジングな試みでもあるんです。
以下、リセマムより。
社会に繋がる東大…映像と音のみの大学紹介ビデオ「UTokyo/Society」
東京大学は1月23日、新たな大学紹介ビデオ「UTokyo/Society」を公開した。ナレーションを使わずに「映像」と「音」だけで構成されており、約2分間の映像に東京大学の魅力が詰められている。映像は東京大学公式YouTubeチャンネルから視聴できる。(後略)
ムービーをご覧いただけるとわかるのですが、はじめから最後まで説明らしい説明がなく、音楽もほぼありません。東大のさまざまなシーンと東大の研究者たちのさまざまな研究が、リズムにあわせて二分割された画面に映し出されていきます。ものすごくシンプルなのに、とてもキャッチーです。
そして、このムービーの種明かしが、東大のウェブサイトでされており、各シーンの解説とともに、それぞれの研究の関連ページへのリンクが貼られていて、研究内容を深く知ることができます。
東大HP内の「UTokyo/Society」解説ページ |
近年のムービーは広報ツールのなかでは、説明ツールというより、まず興味をもってもらうためのキャッチとしての役割を担っている場合がほとんどです。でも、キャッチとはいえ、その多くは程度の差はあっても何かしらの説明をしています。しかし、今回のムービーは、いっさい説明というものをしていません。大学のムービーは数あれど、ここまで潔いものは、はじめてなのではないでしょうか。
じゃあ、これによって何か良いことがあるのかというと、ハイ、あるんです。国や年齢にしばられず、どんな人にとってもキャッチになりえるんですね。
日本語を使っていないから、どの国の人が見ても同じレベルで理解ができるし。説明をしないから、知識がなくてわからないという状況にはならない。極端なことをいうと、どこか遠くの南の島の住む小さな子どもにとっても、このムービーはキャッチとして機能する可能性があるわけです。
こういった視点で見てみると、ものすごく画期的なムービーに感じられるし、確かにそうだと思います。しかし、なかなかマネできないムービーでもあります。というのも、こんなに振り幅があり、興味を刺激するシーンを大量に撮れないんですよ、フツーは。
ほとゼロをやっていて感じるのですが、研究内容をしっかりと教えてもらえたら面白そうだと思える研究は、たくさんあります。でも、ビジュアルで1秒にも満たない時間見せて、興味を刺激するものって、なかなかありません。
ムービーのすべてではないにしろ、このムービーを構成する大きな要素は、胸をときめかせような研究の成果や装置です。これら“未知なもの”が大量にあり、それが氷山の一角だと感じられること、それこそがこのムービーのキャッチーさであり、東大のすごさです。
東大だからできるんでしょ、と思う反面、こういった新しい試みは仕事柄やっぱりわくわくせずにはいられません。それに、自分の大学ならどうか…と考えると、大学のなかにいる人も、普段、気づいていないことにたくさん気づけける機会になりそうです。新しい発想で、新しいアプローチに試みる。大学に関わるものだけではないでしょうが、その意気込みは、ほんと大事ですね。
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