2017/08/12

難しいけど面白い、教員の研究を楽しく紹介する方法(四国大)


前回、紹介したほとんど0円大学プロデュースの『楽しい大学に出会う本』は、大学を観光しよう! 楽しもう!! という切り口でつくったガイドブックですが、今回、似て非なる視点でつくられたガイドブックを見つけました。大学の持つさまざまな専門性を切り口に、大学のあるエリアの観光を呼びかけるガイドブックです。この考え方、大学広報でもちょっと使えるんじゃないでしょうか。

以下、朝日新聞デジタルより。

四国大学の教職員が執筆 大学的徳島ガイド本 
徳島の食や暮らし、文化歴史を紹介した「大学的徳島ガイド―こだわりの歩き方」が出版された。四国大学の研究者や職員がそれぞれの専門分野で執筆。本を読んで実際に現地を歩いてもらおうという工夫もある。同大の松重和美学長は「徳島に住んでいる人にも新たな発見があるはず。本を手に『ブラ徳島』してくれたら」と話す。(後略)

言うまでもないですが、大学はさまざまな分野のエキスパートが集まる教育機関です。同じエリアにスポットライトを当てても、教員によって切り取り方は千差万別になります。上記記事にも「四国遍路、吉野川、県民性、徳島ラーメンなどの麺文化、阿波踊り、阿波弁、阿波藍といった17のテーマ」から徳島の魅力に迫っているとあり、その視点の多彩さが感じられます。

従来のガイドブックだと、現在人気な観光スポットに焦点を当てた平面的なものになりがちですが、学術的な視点が入ることにより、歴史であったり、風土であったり、さまざまな要素を加味した奥行きのある紹介ができ、それがこのガイドの魅力なのでしょう。

また一方で、視点をぐるっと変えると、この本はとてもユニークな大学の教員紹介本という見方もできます。

大学の教員を紹介するとき、それぞれの教員が何を専門にしているのかにフィーチャーして紹介することがあります。しかし、一つの大学であっても、教員たちの専門分野は幅が広く、読者からしたら教員ごとにガラリと話しが変わっていくと、振り回されるというか、読み疲れをしてしまいます。かといって、さわりだけを書いても、あまり魅力的なものにはなりません。

その点、今回のように一つのテーマを立て、それについてそれぞれの専門分野から論じると、視点が定まるので理解しやすいのではないでしょうか。ちなみに以前、大阪大学から『ドーナツを穴だけ残して食べる方法』という、各学問領域の視点で、どうやったらドーナツの穴だけを残して食べられるかを論じた本が出版されて話題になったことがあります。この本が伝えているのは、教員の専門性ではなく学問領域の魅力・特徴についてなのですが、考え方には通じるものがあります。

『大学的徳島ガイド』をよくよく調べると、コレって「大学的エリアガイド」というシリーズものなんですね。しかも、今回のでなんと10冊目! ! けっこうな人気シリーズです。これだけ出ているということは、企画の汎用性が高く、コンテンツの質がぶれにくいということ。ということは、大学広報にも取り入れやすいのかもしれませんね。

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