2017/08/19

地方の大学のために政府がやれることは何なのか


都心に集中する学生たちをいかにして地方に分散させるかは、よく議論される大学の課題の一つです。今のところ特効薬はないのですが、この度、国が思い切った方針を打ち出して話題になっています。

以下、朝日新聞デジタルより。


23区私大、来年度から定員抑制 若者の集中是正狙い 
文部科学省は14日、東京23区にある私立大学の学生の定員増を今後、認めない方針を公表した。大学設置認可に関する告示を来月にも改正する。若い世代の東京一極集中を和らげる狙いだが、どれほど効果があるかは不透明だ。(後略)

近年、大学キャンパスの都心回帰が進んでおり、これがひと段落ついてきたなと思ったら、今回の方針発表です。狙ってのことではないのでしょうが、エサのある方にふらふら歩いていったら、後ろでオリを閉まった…みたいな感じがします。

大学のキャンパスを移転させるのは相当な費用と労力がかかるのは言うまでもありません。それなのに、キャンパスのある場所で区切られてしまってはたまったものじゃないでしょう。それに、そもそもですが、今回の定員抑制は、受験生の立場からしたら、まったくメリットがありません。

地方の受験生からしたら、都心は便利で刺激があって、さまざまな経験ができて、就職活動にも便利。金銭的な不安はあるかもしれませんが、成長できる機会がたくさんあります。このチャンスを、一極集中を和らげたいという受験生にとっては何ら関係ない理由で減らすのはもってのほかです。

じゃあ、このまま23区に学生が増え続けて、地方の大学は衰退していけばいいのか? というと、そうとも思いません。要はやり方の問題です。出る杭を打つのではなく、他の杭を引き上げるには、どうしたらいいかを考えるべきだと思うのです。

地方在住者が都会をめざすのには、たいした理由はいりませんが、地方在住者が別の地方の大学に行く、または都心に住んでいる人が地方の大学に行くには、相当な理由が必要です。この理由づくりを、国で、地域で、大学で、考え、イケている案を支援するのが、この問題を解決するすべてです。都心の大学の定員が変わったからといって、その理由が生まれるわけはありません。せいぜい都会に出ることをあきらめて、地元の大学に進学する後ろ向きな入学者が多少増えるくらいではないでしょうか。

…なんて書きつつ調べていたら、ヘコんだ杭を引き上げるための支援もやるみたいですね。「活性化に交付金、政府方針 東京集中解消狙い(毎日新聞)」という記事を見つけました。うん、これはいい感じです。でも、繰り返すけど、定員抑制はいらないです。

18歳人口が今後ますます減っていくことが確定しているなか、大学の経営論はどうしてもネガティブな論調で語られがちです。こういう状況だからこそ、上向きのベクトルで考え行動することが大切になっていきます。ただでさえ、その気運がなくなってきている最中、政府がそれを削ぐというのは、やはりちょっとな、とどうしても思ってしまうのです。

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