先日、会社の近くの紀伊国屋で本をぼんやり見ていると、近畿大学の大学案内『近大グラフィティ』が売っていました。近大のキャンパスに近いわけでもなく、ビジネス街にある紀伊国屋です。大学との縁もゆかりもないところでも“売れる”と店員に思わせるわけですから、この大学案内は、もう立派な雑誌なのでしょう。
ちなみに今年は、エイ出版の『世田谷ライフ』と駒澤大学がコラボして『駒澤ライフ』という大学案内兼雑誌も販売されていて、ほんのちょっと話題になりました。さらに、これに続けとばかりに、岐阜聖徳学園大学でも地元の出版社とコラボした雑誌が出版されたようです。
以下、大学プレスセンターより。
岐阜聖徳学園大学が学生のための岐阜ガイド誌「GIFU LIFE For Students」を発行 -- 学生の声をもとに、若者が岐阜に興味を持つような情報を紹介
岐阜聖徳学園大学(岐阜県岐阜市)は、高校生や大学生などの若者に向けた岐阜ガイド誌「GIFU LIFE For Students」を発行した。これは、遠方からの岐阜地域への進学や移住を促進するために企画したもので、地元出版社のさかだちブックスが制作。同大で実施した学生アンケートをもとに、学生が推薦する岐阜地域の観光や買い物、イベントや学習施設などを紹介している。同大のオープンキャンパスや高校で配布するほか、岐阜地域の書店やインターネットショッピングサイトAmazonなどで販売。価格は400円(税別)。(後略)
広義な意味では、『GIFU LIFE For Students』も『駒澤ライフ』も『近大グラフィティ』もすべて大学の広報ツールです。とくに『駒澤ライフ』と『近大グラフィティ』は、大学案内という大学広報にとって主砲的な位置づけになるツールです。でも、いわゆる通常の大学案内とは大きく内容も表現が異なっていて、『駒澤ライフ』にいたっては、大学案内のもっとも伝えるべき内容である学部学科紹介が、ひと見開きしかありません。
『近大グラフィティ』と『駒澤ライフ』 |
これら大学生まれの雑誌は、“大学が伝えたいこと”という視点ではなく、“若者が興味を持つこと”という視点に徹底してつくられています。だから、普通はまず必要だと思う情報でも、面白くなければ載せない。大学広報に頭まで浸かっていると、なかなかできない発想です。
とはいえ『GIFU LIFE For Students』はあくまで、オープンキャンパスで配布するサブツールのため、こういった表現もむずかしくありません。また、この冊子は、岐阜の魅力アピールという目的もあるのですが、サブツールならそれも可能です。ですが、残りの2冊は大学案内。大学案内の役割を変えるというのは、冊子単体の話しではなく、広報戦略そのものを組み替えることを意味します。
そこまでして大学案内の役割を変えるのは、近大にしろ、駒澤大にしろ、入試広報で重視することの優先順位が他とはそもそも違うからなのかな、という気がします。通常の入試広報では、大学をよりよく見せること、より詳しく伝えることに重きを置きます。でも、雑誌を大学案内にするこれら大学は、情緒的な側面、“大学を好きになってもらうこと”を重視しているように感じるのです。また、具体的な企画や内容面にフォーカスするなら、これまでは大学で何ができるかがほぼすべてでしたが、雑誌系大学案内は大学での暮らしに重点を置いています。
10年以上もの間、毎年せっせっと大学案内をつくっている私としては、改めて本記事を書きながら考えてみて、大学案内のそもそもの役割を変えてもいいんだと発見したのは地味ながらけっこうな衝撃です。そして、大学案内の意味づけを変えることは、マンネリ化している大学の広報戦略を考え直す、いい“軸”になるのかなという気がしました。
最初、大学案内にもホスピタリティの精神が必要だよという内容を書こうと思っていたのですが、だいぶ違う記事になってしまいました…。でもまぁそういうこともありますよね、はい。
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