2018/07/28

この夏一番ぶっとんだオーキャンプロモーション!? あえて伝えない密教的情報発信(高野山大)


前回の近畿大学のオープンキャンパスの記事に引き続いて、今回もオープンキャンパスの取り組みを紹介します。取り上げるのは、高野山大学。この大学は、真言密教の聖地である高野山にあることもあり、多くの人は、お坊さんを育てるための大学でしょ、と思っているのではないでしょうか。

実際、そういう側面も強く、厳かで神秘的なイメージがあります。この高野山大学が、ある意味ではとてもこの大学らしく、ある意味ではまったくこの大学らしくない、思い切ったオープンキャンパスのプロモーションを展開しました。すごい!でも何があったの?と、讃えたくなる反面、心配してしまう強烈なインパクトです。

以下、朝日新聞デジタルより。

ひ・み・つの密教 創立132年の高野山大 
高野山大学のオープンキャンパスは、秘密だらけの「シークレットキャンパス」――。同大学は28、29日、密教について学べる体験入学イベントを開く。切り口は、「ひ・み・つ」。密教学科と創立132年を引っかけ、「あえて教えない 見つけにくるオープンキャンパス」とうたう。案内状が黒塗りだったり、特設サイトでは、学生の恋愛についての質問に難解すぎる経典の言葉を引用して遠回しに答えたり。空海もびっくりな仕掛けがいっぱいだ。(後略)

リンク先の朝日新聞の記事を読むと、そこそこ書き尽くされているのですが、登録しないと最後まで読めないため、面白いポイントについて簡単にレビューします。ちなみに記事にはDMについても触れていますが、高校生ではない私が確認できたのはランディングページのみなので、こちらのみの記述です。

まず、ページを開けると、「本当のあなたを、知っていますか?」とう意味深な問いかけが、うっすらと曼荼羅が見える薄暗い背景とともに出てきます。もうここで、オープンキャンパスでも何でもないです。さらに、この問いかけには仕掛けがあって、「いいえ」しか選択ができません。



それで、次ページにいくと、縦書き、横書きが混在しながら、非常にふわぁっとしたオープンキャンパスの紹介がはじまります。で、ひと通り読むとわかるのですが、このランディングページ、紹介という意味ではほとんど内容がない。メインプログラムの説明は、経文や仏像の後頭部に邪魔されてほぼ解読不能だし、Q&Aは答えているのかいないのかわからない回答ばかり。ちなみに、メインプログラムの一つに「隠れミッキョー」という、「隠れミッキー」のパロディになっている果敢に攻めた企画があるのですが、こちらも内容も読めない。ものすごく気になます。



極めつけはアクセス紹介で、路線図等での説明はいっさいなく、霧深い山のビジュアルと「南海高野線『難波駅』より徒歩930分」の文字があるだけ。これ、修行ですよね。



……と、書き出すとキリがないのですが、あえてまったく伝えないというプロモーションは、他業界ではあっても、保守的な大学業界では、ありえないほどに思い切っています。しかも、密教の神秘的なイメージを、逆手にとってユーモアたっぷりに見せており、同じことをキリスト教系の大学がやるかというと、たぶんやらない(できない)だろうな、という気がしました。

一方、これだけ内容がシークレットなのに、朝日新聞の記事を読むと、大学関係者から“定員割れで困っているからやってみた”という、かなり身もふたもないコメントが載っています。ここもシークレットでしょと思いつつ、ギャップに笑いました。

「徒歩930分」という衝撃的なフレーズが示すように、高野山大学は関西在住であってもかなり遠い大学です。おまけに仏教(さらに言うと真言密教)という、限られた分野に特化した大学というイメージが強く、幅広い層の高校生を呼び込むには、これほどまでのインパクトが必要だったのか……と、その裏側を想像して大変さを感じ入ります。ちなみに、プロモーションがぶっ飛んでいるから目立ちませんが、この大学では高校生の交通費を、なんと上限4万まで補助しています。ここからも本気度合いがうかがえます。

前回の近大もそうでしたが、オープンキャパスとひとことでいっても、その表現、伝えるべき内容が、だいぶ多様化してきたように感じます。おそらく今後、この傾向はさらに強まるでしょう。多様化を面白いと思う反面、決まったフォーマットがなくなるのであれば、このイベントの意味、役割を、大学ごとにいまいちど考え直す必要があるのかもしれませんね。

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