2018/10/21

教育のために、経営のために、入試をもっとエゴイスティックに(昭和大)


東京医科大学の入試の不正に続いて、昭和大学でも似たような不祥事が続いています。今回は、男性や現役生の優遇に加え、同窓生の親族も優先させたとか。受験生からすると、ふざけるなコノヤロー!という感じですが、大学からしてみては、悪いこととはいえ、いろいろと思うところもありそうです。東京医科大の女子一律減点を取り上げた記事でも思ったのですが、これってなかなかナイーブな問題なような気がします。

以下、朝日新聞デジタルより。


昭和大、医学部入試で不正認める 現役や卒業生の子優先 
昭和大(東京都)は15日に会見し、医学部入試で現役と1浪の受験生に加点をする不正が行われていたことを明らかにした。また、一部の試験で合格者を決める際、同窓生の親族を優先させていたという。今後、第三者委員会を設置して調査するとともに、不利益を受けた受験生への対応を検討するという。(後略)


昭和大の入試点数の不正操作は“不正”であるため、弁護できるところは何もないのですが、入試が必ずしもフェアである必要はないように思います。というより、入試をしている段階で、どのような科目で、どんな設問の試験をするのかとか、試験会場をどこにするのかとか、すでに大学の意図が介在しています。だったらそこに、男性を取りたいとか、現役生を取りたいとか、そういう意図が足されてもいいように思うのです。

必要なのは、そういった大学独自の意図をちゃんと社会に伝えることです。それによって、大学は社会から反感を買うこともあるし、逆に共感を呼ぶことがあるかもしれません。とはいえ大学の教育面でのミッションは、社会が必要とする(と大学が考える)人材を育成することです。

人材の育成は、どういう教育をするかも大事ですが、どんな人に教育するかも、同じように大切です。大学が掲げているミッションに対して、真摯に対応した場合、ときとして入試がアンフェアになることがあるかもしれない。でもそれは、ちゃんと公表してやるのであれば、大学も大きなリスクを抱えながらやるわけで、単に自校の利益を優先して行うわけではありません。欲しい人材以外に門戸を閉ざす……というのは、やってはいけないことです。でも、欲しい人材が入りやすいように入試をデザインするのは、必ずしも悪ではないような気がするのですが、どうでしょうか。

また、アメリカのアイビーリーグでは、「レガシー制度」といって多額の寄付をしている卒業生の親族を優遇して入学させる制度があります。こちらは上記した大学のミッションうんぬんと違ってお金と直結する制度ですが、アメリカではフツーに根付いています。

今後、日本の大学は、少子化により財布事情がさらに厳しくなるのは明らかです。卒業生の親族をどう取り込むかは、さらに真剣に考えるべきテーマとして挙がってくるでしょう。これを露骨に推し進める場合、卒業生の子息向けの入試優遇制度と奨学金制度に落ち着くはずです。現在、奨学金制度については用意している大学がけっこうあります。さらに一歩踏み込んで、入試制度でも優遇するところが出てきても不思議ではありません。

ちなみに、卒業生の子息優遇は「卒業生に恥ずかしくない大学であり続ける」という、大学自身への戒めだとも受け取れるので、私個人としてはネガティブな印象はあまりありません。場合によっては、自分の孫の代で恩恵を受けられる可能性もあるわけですし。でも、やるなら絶対に公表してからやる! 影でこそこそやるのは、どんな内容であれマイナスイメージにしかならないし、場合によっては法に引っかかってしまいます。

入試制度に規制等がどうなっているのかを調べず、勢いのまま書いてしまいました。でも、どの大学であれ、学生を受け入れ育てることが、最大のミッションの一つだし、経営の根幹にも関わることです。大学業界がシュリンクしていくなかで、単に学力を見るためだけに試験をするといった悠長なことは、今後していられなくなるのではないかという気がします。

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