さまざまな大学の情報を手軽に見ることができ、なおかつ大学案内等の資料請求もできるので、進学情報のポータルサイトを重宝する受験生はたくさんいます。しかし、これらポータルサイトは、広告の集合体という側面が強く、良いも悪いもすべての情報が載っているかというと、一概にそうとは言い切れません。こんな状況に業を煮やして……なのかはわかりませんが、より公平な視点で情報提供できるように朝日新聞と河合塾が新たな取り組みをはじめました。
以下、リセマムより。
【大学受験】朝日新聞×河合塾「大学サーチくん」691大学を検索可能
朝日新聞デジタル掲載の「大学サーチくん」では、2018年度「ひらく日本の大学」調査に回答した691大学について、情報検索を行うことができる。学部単位での初年度納入金や教員数、学部・学科単位での卒業後の進路などが表示される。(後略)
朝日新聞と河合塾の調査結果を検索できる「大学サーチくん」 |
これは2011年度から取り組んでいる朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」の2018年度の調査内容をデータベース化して一般に公開するというものです。「ひらく 日本の大学」の調査目的は、「『偏差値』にとらわれない多様な価値観を提供すること」。初年度納入金などいくつかの数値、割合について調べることができます。ちなみにこれと似た取り組みとして、読売新聞による大学一斉調査「大学の実力」の調査内容を検索できるサービスを、同新聞社が手がけています。こちらは調査内容をまとめた単行本『大学の実力2019』(中央公論新社)の購入特典なので、広く誰でも使えるというものではないようです。
数字は嘘をつけないというか、数字で大学を知るというのは、大学を判断するうえで大切な切り口だと思います。受験生向けの広告は、ターゲット層が明確なうえ、どんな情報が好まれるのかも、すでにわかっている状況でつくられています。発信している情報に嘘はないにしても、情報を編集していくと、どうしてもどの大学も顔つきが似がちです。
怒られそうな例えですけど、人気のファッションや顔つきを熟知した結果、同じ雰囲気の女性が並んでしまうK-POP女性アイドルグループに似たものを感じます。夢を売るアイドルはそれでいいのですが、大学の場合、化粧を落とした素顔や普段のファッションも見ないことには安心して志望することができません。数字は、そのためのいい判断材料になるはずです。
ただ難点もあって、知識が無い状況で数字を見ても、なかなかそこに込められた意味・内容がわからないんですね。複数大学で見比べることはできるので、相対的に良い悪いは判断できます。でも、そもそもどれくらいの数字が望ましいのかとか、単純に比較してOKなのかとか、数字の裏側にどういう要因があるのかとか、そういったことを考え出すと、おそらく受験生一人の力で読み解くのは難しいでしょう。そうはいっても、これはこうであると発信側で結論づけてしまうと、多様な読み取り方ができなくなり、読み取れる情報量が一気に減ってしまう恐れがあります。
そのため欲をいうと、たとえばこういう視点でこの数字を読み取ると面白いとか、ここの背景にはこういう状況があるかもしれないとか、識者による「私ならこう読み解く!」みたいなものがついているといいなと思いました。公式見解としてではなく、あくまで個人の意見として載せ、切り口や立場の異なる複数名のものが載っていると、利用者の理解を促すし、自分なりの見方・使い方を模索しようという気持ちを刺激します。無料で公開しているものを引っ張ってきて、そこまでやって欲しいというのは、だいぶ図々しい話ではありますが、でもあると、きっともっと魅力的なものになるはずです。
大学関連の広告をつくっている立場のものが言うことではないのですが、今回の「大学サーチくん」のような、広告的なものと切り離され、横断的に大学の情報を手に入れられる媒体は、受験生にとって大きな価値があります。「大学ポートレート」もこれに該当するように思いますが、数字を大々的にあつかったものはこれまでなかったので、とても喜ばしいです。
今後、こういったサイトの認知度が高まっていくと、化粧にかくされていた大学の素顔がもっと目にとまりやすくなっていくし、そうなると化粧そのものの意味や価値がうすれていくのかもしれません。化粧品を買っていた費用を、自分磨きにまわせるようになれば、受験生にとっても、大学にとっても、それはとてもいいことなような気がします。
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