2018/11/17

子どもたちよ、教科書を捨て研究をしよう(大阪大等)


高大連携は大学にとって優秀な学生の獲得につながるため、積極的に取り組んでいるところがたくさんあります。今回、取り上げる大阪大学等の取り組みは、この高大連携を飛び越えた、小学校や中学校との連携事業です。私も小学生の子どもを持つ親ですが、こういう取り組みって、けっこう大事なように感じました。

以下、朝日新聞デジタルより。

子どものうちに本物の科学を 阪大教授らが研究指導の塾 
大学教授らが小中学生に科学を直接教えて研究も指導するプログラムが広がっている。国の助成を受け、大阪大は今秋から京都大などと連携した5年がかりの講座「めばえ適塾」を始めた。科学技術を担う人材を育てたい国と、少子化のなかで有望な子を発掘したい大学の思惑が一致した形だ。(後略)

この「めばえ適塾」は、阪大が中心となり、阪大、京大、関大らの先生たちが、小中学生に研究指導を行う取り組みです。前回の記事で、大学教員は研究のプロだけど、教えるプロではないんじゃないか、という話を書きましたが、見方を変えれば小中高の教員は教えるプロではあるけれど、研究のプロではない、ともいえます。

知識という面では、研究は基礎教育のうえに積み上がっていくもので、基礎がある程度できていないとはじまりません。でも、姿勢というか、マインドというのか、精神面では、小中高の勉強と研究はまったく異なっています。

小中高の勉強は、すでに確立しているものを覚える受動的な行為です。しかし、研究は疑問を見つけ、それを自分なりの切り口や考えで突き詰めていく、とても能動的な行為になります。小中高の先生たちは、すでにわかっていることを、わかりやすく効率的に教えることに長けています。でも、研究について深く通じているのかというとそうではありません。研究の大変さや、進め方を熟知している研究者が研究指導を担うのが一番です。

今回の「めばえ適塾」は、研究を教えるなら研究者という、とてもわかりやすいアプローチを真剣にやっている取り組みなように感じました。

私は研究者ではないので、あくまで推測の域を出ないのですが、研究者に必要なのは、疑問を見つける嗅覚であったり、知ることを面白いと感じる感性であったり、知識をまったく別の知識とつなげる発想であったり、いわゆるお勉強で身につけられる知識(≒情報)とは別ものの力や感覚なように思います。

これらは、基礎的な知識が無くても身につけられるものだし、基礎的な知識を覚えるのとは、まったく違うシーンで鍛えなくてはいけないもののはずです。少なくとも、答えや解き方がすべて載っている教科書を読んでも、新しい知識を開拓する楽しさを得ることはできないでしょう。

寺山修司の「書を捨てよ町へ出よう」ではないですが、「(教科)書を捨てよ研究をしよう」という取り組みを、大学で学ぶための準備として早期からやっておくことは大事です。まぁ、本当は、教科書での勉強はしつつ……なのでしょうが。

それに、こういう研究視点を持つと、従来のお勉強の捉え方もきっと変わっていって、小中高での勉強も、もっと楽しくなっていくはずです。優秀な人材を獲得したい大学と、「探求型学習」を導入していきたい小中高。両者の思惑には合致するところが多いので、ぜひこういった取り組みはもっと広がって欲しいですね。

2 件のコメント:

  1. ブログに取り上げてくださり、ありがとうございます。今後はめばえ適塾で受け入れている目がキラキラしている子供達に大学院生が触れ合う機会を増やしていきたいと思っています。

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    1. コメントありがとうございます。大学の魅力的な活動に興味がありますので、ぜひ何かありましたらお教えください。今後のご活躍に期待しております!

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