2019/04/13

考えるほどに悩ましい海外向けPRツールをどうつくるか(拓殖大)



海外からの留学生獲得は、以前からずっとある大学の大きな課題です。海外向けのPR活動には、現地でコツコツと大学の魅力を説明するというのがある一方、海外向けウェブサイトを作って情報発信をするというのもあります。今回、見つけた拓殖大学の海外向けウェブサイトは、情報が充実しており、かなり本腰をいれて制作した印象を受けました。

以下、大学プレスセンターより。

拓殖大学 創立120周年を目前に英語版ホームページがリニューアル 
拓殖大学は創立120周年となる2020年を目前に控え、英語版サイトを大幅にリニューアル。動画「TAKUSHOKU LIFE MOVIE」で留学生達の日常を紹介。(後略
拓殖大学英語版ウェブサイトは、英語版らしからぬ充実ぶりに目を見張る


拓殖大学が伝統色として使っているオレンジがビビットに効いたウェブサイトはデザインが洗練されているだけでなく、情報も充実しています。なかでも、「TAKUSHOKU LIFE MOVIE」という各国から来た留学生の生活を丁寧に描いた動画は、出来が非常に良いものでした。勝手の知らない留学先の国での生活は、誰しも不安があるはずです。自身がここに留学するとどういう毎日を送れるのかが具体的にイメージできる情報はとても貴重です。もしかしたら、実際に留学生にヒアリングなどをして、制作を決めたのかもしれませんね。内容やクオリティから、しっかりと意図を持たせて作っているように感じました。

実は私も仕事で、時折、海外向けのPRツールを作成することがあります。携わった仕事の多くは、日本語版のサイトやパンフレットをダイジェストにまとめ直して翻訳してしまう、というのがほとんどでした。これら仕事をしながら、ふつふつと感じるのは、日本人が欲しがる情報と、海外の留学希望者が欲しがる情報は、本当に一緒なのか、ということです。

たとえば、学部学科紹介に設けられた取得可能な資格の紹介欄。日本人の受験生にとって、看護師や管理栄養士といった国家資格はとても意味があります。でも、海外の留学希望者にとって、どこまで意味があるのかがわかりません。また同様に、就職支援なんかも、日本人学生と留学生では、同じ文脈では語れないところがあるでしょう。私がこれまでに携わった仕事が、たまたまそうだっただけかもしれません。でも、留学生や海外に向けて情報発信する場合、既存のツールをベースにすると、どこか的を外れたものになる怖さがあるように感じています。

もう一つ悩ましいのが、言語です。伝える側として、細かいニュアンスまでコントロールでき、一番伝えやすいのは、もちろん日本語です。おそらくその次が英語で、そのあとに中国語、韓国語、さらにそのあとにインドネシア語やベトナム語などが続くのかな、という印象があります。

言語という意味では、留学希望者たちの母国語で伝えるのが一番なように思いがちです。でも、アジア圏の優秀な若者たちには、日本人より英語ができる人がとても多くいます。そうすると、あえてニュアンスの調整が効きにくい言語で表現するよりも、英語で伝えた方がいい場合だってある。それにコストの問題もあって、各言語版でツールを作るより、しっかりと作り込んだ英語版を作成した方が、結果的に効果が出るということだってありそうです。

一方で、来てもらいたい層が英語が堪能な層でない場合もあるし、留学生の保護者や関係者までレンジを広げて考えるなら、留学希望者の母国語で伝えた方が無難です。こういう微妙な判断が必要になるのに、いかんせん海外なので、それを感覚的につかむことが難しい。こういったこともまた、海外向けツール作成の悩ましいところのように思います。

何が正解なのかはわかりません。でも、というか、だからこそ、わからないからこそ、ちゃんと留学生の声を聞いて、ゼロベースでつくる。少なくともスタートは、そこなのだろうと思います。

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