2019/04/06

「研究」「教育」が伝えられること、「学問」じゃないと伝えられないこと(駒澤大)


大学の学術系のコンテンツを無理くりカテゴリ分けしてしまうと、「研究」「学問」「教育」の3つのカテゴリに分けられるように思います。「研究」と「教育」は各大学の固有のものになり、直接大学のPRにつながるのですが、「学問」については、なかなかそうはなりません。でも、実は「学問」こそ、自由度が高く、注目すべきテーマなのかな、という気がしないでもないのです。「禅」をテーマにした駒澤大学の特設サイトから、そんな考えにつながる、ヒントを感じました。

以下、大学プレスセンターより。


駒澤大学が禅ブランディング事業の一環としてWebサイトで新企画「ZEN対談」を開始 -- 第1弾は「禅とユーモア」 
駒澤大学(東京都世田谷区/学長:長谷部八朗)は、Webサイト「ZEN,KOMAZAWA,1592」において、新たな企画として「ZEN対談」をスタートさせる。同サイトでは「『禅と心』研究の学際的国際的拠点づくりとブランド化事業」に関する実績やイベント情報、コラムなどを掲載しており、新企画は禅や仏教の言葉について幅広い層に興味を持ってもらうことを狙いとしたもの。第1弾は「禅とユーモア」をテーマに、タレントで同大仏教学部学生の萩本欽一氏と長谷部八朗学長の対談を配信する。また、同事業では2月にInstagramを開設しており、禅や仏教についての情報を発信している。(後略) 
ZEN,KOMAZAWA,1592」はデザインがスタイリッシュ


今回、見つけたプレスリリースでは、この「禅」をテーマにした特設サイトZEN,KOMAZAWA,1592に、駒澤大学の学長と、“欽ちゃん”こと萩本欽一さんの「ZEN対談」が掲載されたことが紹介されていました。欽ちゃんは、駒澤大学の社会人学生として学んでいることは有名で、社会人学生になったことをテーマにした書籍『欽ちゃんの、ボクはボケない大学生。 73歳からの挑戦』を文藝春秋から出版したりもしています。

「禅」が学問かというと、なかなか判断が難しいところなのですが、でも、学問に似た側面があるように思います。知的で、その分野ならではの切り口があり、さらには日々研究されている、などなど。……で、今回の特設サイトはこの「禅」の魅力を広く伝えるためのサイトなのですが、コンテンツがとても多彩です。「ZEN対談」をはじめ、禅の歴史であったり、禅と関わる歴史上の人物の紹介であったり、さらには「坐禅をすると業績が上がる!?」のような、私たちの日常と関わりがあるコンテンツなんかもあります。こういう多彩な切り口ができるのは、「研究」「学問」「教育」の3つでいうと「学問」しかできないように思うのです。

「研究」はそれぞれの研究内容の紹介になり、そのものズバリという伝え方しかできません。もちろん研究内容が面白かったら、ものすごく魅力的なコンテンツになるのですが、刺身みたいなもので、素材(研究内容)がすべてです。「教育」は、手法であって、受験生や保護者、一部の教育関係者には興味があるけど、社会全体としては“自分と関係ないこと”と捉えられがちな情報になります。

じゃあ「学問」はどうかというと、これは社会のさまざまな人と具体的にかどうかはさておき、何かしらのかたちで関わっています。それに、なにより、表現がとても柔軟なんですね。たとえば、学問×人。これはまさに「ZEN対談」なのですが、一つの学問を話題に、立場や考え方の異なる人たちで語り合うことができるし、その差異を楽しむこともきます。「研究」であれば、インタビュアー(聞き手)とインタビュイー(研究者)の関係になってしまい、どうしても広がりにかけてしまいます。また、その学問の視点で現代社会の課題を提言したり(学問×社会課題)、学問と歴史的人物との関係性を解き明かしたり(学問×歴史ないし偉人)なんていう切り口でコンテンツを作ることも可能です。

他にもいろいろな切り口が考えられるのですが、これができるのは「研究」が個人やグループに属した活動であり、「教育」がごくごく一部の人に向けた手法であるのに対して、「学問」は範疇が広く、脈々と受け継がれている大きなカテゴリだからのように思います。

「研究」も「学問」も「教育」も、何となくアカデミックな情報としてひとくくりに見られがちですが、けっこう情報の毛色が異なります。「研究」「教育」に比べると、「学問」は大学のPRには直結しにくいのは確かです。でも、「学問」のうえに「研究」や「教育」が乗っかっているともいえるわけで、「学問」をうまく伝えられると、残り二つの情報はもっと活きてくるはずです。今回の特設サイトであったり、以前、ほとぜろで紹介した龍谷大学の「Mog-lab」であったり、最近はこういう取り組みが少しずつ増えているような気がします。個人的には面白い流れだと思うので、ぜひ増えていって欲しいですね。

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