昨今の大学の広報活動を見ていると、ユーモアがあるものが増えてきたように思います。最近だと本ブログでも取り上げた京都学園大学の本能寺ナイトウォークなんかが、どこかぶっ飛んでいて、独特の面白さがありました。で、今回、紹介する神戸大学の取り組みも、そんなカテゴリに含まれるものの一つ。この企画の考え方には、なんとなくですが、今後の大学広報のヒントがあるように感じました。
以下、朝日新聞デジタルより。
まるで登山? 「しんどい神大」散策ツアー
「まるで登山? しんどい神大(しんだい)」と名付けたキャンパスツアーを神戸市灘区の神戸大学が11日の「山の日」に合わせて開いた。10代~80代の参加者38人が六甲山の中腹にあるキャンパスを約2時間かけて散策した。(後略)
このイベントは、六甲山の山肌にありキャンパスのほとんどが斜面になる神戸大学のメインキャンパスを散策するというものです。イベント名の自虐的な言い回しに、近年よく見かける地方のまちおこしを彷彿させます。これはたとえば、有吉弘行が観光大使を務める広島県の「おしい! 広島県」や、茨城県の「のびしろ日本一。いばらき県」。また、スターバックスがないことから生まれた鳥取県の「すなば珈琲」なんかも、まちおこしなのかは微妙ですが精神として通じるものがあります。
自虐ユーモア、といったらいいのでしょうか。地方のまちおこしと同じ手法を大学がするのは、ちょっと興味深いです。
そして、これら取り組みの面白さというのは、突き詰めると“ギャップ”だと思うんですね。県という公のものが、ネガティブなことを言う。大学という高尚(?)なものが、後ろ向きな発言をする。そこに生まれるギャップに面白みであったり、可愛げが生まれるのだと思います。
ひと昔前になりますが、大学業界(というか入試広報)で“ギャップ”を生み出すことで人の興味を引く手法が流行ったことがあります。それは、大学案内を雑誌風につくる、というものです。
これは極端に表現するなら、アカデミックな大学が、あえてアホっぽい表現をすることで冊子にインパクトを与えるという手法です。そこには話題性を呼ぶためだけでなく、文字を読まなくなってきた高校生に少しでも読んでもらうための苦肉の策という一面もあったように思います。
でもこれって、大学のブランドの切り売りで、結局“アカデミックな大学”という前提が薄れてくると、面白みがなくなってくるんですね。だから、一時はいろんな大学でチャレンジングな大学案内がつくられましたが、今ではかなり鳴りを潜めています。ただ例外として、近畿大学が大学案内を雑誌風に表現しており、これが話題になったので、今後ブームが再燃する可能性がゼロとは言い切れません。
で、話しを戻して、今回の自虐ユーモアですが、これも似たところがあって、言い過ぎるとしらけてしまうし、ネガティブなところが印象に残ってしまいます。でもそれを上手くコントロールできれば、けっこうなインパクトを与えることができます。地方自治体はPR会社などをかまして、そこらへんをシビアに見極めながらプロモーション展開をしているわけです。
神戸大の取り組みは、学生広報チームによる企画・運営のようですが、今後もしかしたら大学でこういった動きが出てくるのかな、と予感させてくれるものがありました。直線的な広告から話題づくりの広報へ。しかも、大学は半分公の機関といってもいい機関なわけで、地方自治体と通じるところは多分にあります。この地方自治体のトレンドからアイデアを引っ張ってくる。大学向けの企画を考えるうえで、これはアリです。
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