2017/04/29

寄付とは研究に市民を巻き込むスイッチである!(北海道大)


教育と研究は、私立、国公立関わらず大学が発信する魅力の二大看板ではないでしょうか。教育は、受験生たちにとって自分と直接関わることのため細かくチェックするので、スポットライトがよく当たります。しかし、研究は大きな成果でも出ない限り、なかなか目を向けてもらえないのが実情です。こんな不遇(?)な研究に、ユニークな切り口で興味をもってもらおうと北海道大学の研究者たちが取り組みをはじめたようです。

以下、朝日新聞デジタルより。


市民から研究費を募る試み 北大の4教授 
北海道大学の教授4人が今月から、一般市民から研究費を募る取り組みを始めた。研究費を充実させることが目的だが、広く市民とつながるきっかけにしたいと考えている。 
寄付を呼びかけているのは、がん予防治療法を研究する藤田恭之教授や発展途上国の衛生管理を調査する山内太郎教授ら4人。「寄付で応援! 北大の研究」を立ち上げた。研究内容や教授たちの魅力を伝える動画などを公開し、寄付を募っている。(後略)
研究内容を知る読み物としても楽しめる「寄付で応援! 北大の研究」

今回の記事で取り上げられている「寄付で応援! 北大の研究」は、サイト名がすべてを語っているように、北海道大の研究者を応援するために寄付を募るサイトです。こう書くと、研究活動を広報することより、支援することに重点を置いているように見えます。でも、このサイトの本質は、広報だと、わたしは思うのです。

というのも、興味をもつ、それに理解するための一番の近道はその対象と“関わる”ことです。たとえば、株式投資。これについて書かれている本を読んでいると決まって書いているのは、本を読むだけではわからないから小額でもいいのでとりあえずやってよう、という文句。わたしは株をやらないものの、他で似た経験をしたことがあり、これは真理なのだと思います。

そして「寄付で応援!〜」のサイトのねらいも、おそらくこれなのではないでしょうか。北海道大の研究者に寄付をすることで、これまで知らない人の知らない研究だったことが、急に身近に感じられるようになる。それに小額であっても寄付をすれば、そこでその人はパトロンです。研究が成功したり、世の中の役に立ったりすれば、研究もすごいけど、その研究に目を付けた自分もすごい。そんな方程式(?)も成り立つ訳で、自然と応援する気持ちが湧いてくるように思います。

極端にいえば、寄付は“他人ごと”を“自分ごと”に変えるスイッチなのです。だから、たとえばですが、サイエンスカフェを開いてコーヒー代を100円とる。そのときの100円をコーヒー代といわず、講演者への寄付という体裁にするだけで、研究者に対しての距離感が変わるのではないでしょうか。

単純に寄付が増えて、研究費が増えればそれに越したことはありません。とはいえ、日本にはまだまだ寄付文化は根づいていません。だからまずはその前段階として、研究者と社会の距離を縮める手法に活用し、小額でもいいし、体裁だけでもいいので、寄付を通じて多くの人を研究に巻き込んでいく。そんな視点で寄付をとらえると、これってすごく斬新な広報なんだと思えてくるわけです。

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