2018/02/10

地方定住者を増やす、大学と自治体の二人三脚


昨年から話題になっている東京23区での大学定員抑制は、10年間の時限措置としながらも、2月5日に閣議決定しました。これについては、以前の記事にもまとめたのですが、あまり効果的な方法には思えません。とはいえ決まってしまったわけですから、これを弾みに、地方の大学が躍進していって欲しいと思います。

今回、見つけたのは、そんな地方の大学への進学を後押しする取り組みの記事です。タネあかしをすると、奨学金の記事なのですが、これからはこういう取り組みがもっと重要になってくるように思います。

以下、朝日新聞デジタルより。

若者の定住促進に奨学金を給付・米原市 
米原市は4月から、市在住者が大学や短大、専門学校などを卒業後に、一定期間市内に住んで働く若者向けの奨学金制度を始める。15日から1カ月間、申請を受け付ける。市によると、県内では5市1町が給付型奨学金を導入しているが、定住を支給条件にするのは初めてという。(後略)

地域に定住することを条件にした給付型奨学金というのは、今回の米原市だけでなく、実はかなりたくさんあります。2017年3月に発表された日本学生支援機構の調査によると、大学生のうち2.6人に1人が奨学金制度を利用しているとあるので、経済面で厳しさを感じている大学生やその家庭は多いように思います。だとすると、定住というかなりハードルの高い条件があっても、給付型奨学金に魅力を感じる大学生は少なからずいるのではないでしょうか。

地方に限らずですが、大学が志望者を増やすために、まず努力するのは教育内容の魅力づけです。これが功を奏すると、学生たちは大きく成長し、その実績を見て志望者が増えていくというのが、最も王道なめざすべき大学活性化のパターンです。

しかし、これがうまくいって学生が成長すると、すべてではないにしろ多くの学生は、自分の能力に見合った企業で働きたいと考え、企業数が多い都市部であったり、場合によっては世界に飛び立ったりします。喜ぶべきことなのですが、こうなると結局、地方の大学が教育の質をあげることイコール定住促進にはならないように思うのです。

今後、多くの地方大学はこれまでにも増して生き残りをかけて、教育力アップに力を注ぐでしょう。この動きに合わせて卒業生のつなぎとめに注力しないと、地方は“通過点”にしかなりません。

給付型奨学金のように、わかりやすい卒業生のつなぎとめ策は、自治体としての意志を社会に発信するうえでも大切です。でもこれと並行して、長期的な視野に立って成長した学生が働きたくなる環境”をつくる必要があります。企業や行政機関の誘致、学生のスタートアップを街全体で応援する風土や制度づくりなど。アプローチはいろいろあるし、すでにやっている自治体も多くあります。

ただ、この環境づくりは自治体だけでやっても効果がうすいのかもしれません。というのも、大学の改革の先には“育成したい学生像”があります。この学生像に当てはまる人物が働きたいと思えるのはどういう街なのか、大学と自治体がしっかりと議論し共有しないことには、ズレが生じる恐れがあるからです。

若者が減り続け、東京の一極集中が加速するいま、大学と自治体がメッセージと行動をそろえ、学生の未来をプロデュースする。定住者を増やすには、立場や視点のことなるプロデューサー2名の意思統一が、これまで以上に必要になってくるように思います。

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