2018/02/17

大学が大学らしく稼ぐには(徳島大)


18歳人口が減り続けていくなか、大学は学費以外の収入源を見つけなくてはいけない…。何回、書いているんだというほど、こんな出だしの記事を本ブログで書いてきましたが、それだけ繰り返しているのは大学にとって大きな課題であるからに他ありません。今回、見つけた徳島大学も、この課題に果敢に取り組む大学のひとつ。しかも、このアプローチは斬新です。

以下、朝日新聞デジタルより。

徳島大、学内に企業研究室 学長「運営厳しく…収入に」 
徳島大学は4月、民間企業の研究室が複数入る「大学産業院」を設ける。企業の研究を支援し、学生と企業との交流も深める。国からの運営費交付金が減るなか、特許の共同出願などで独自の収入を増やすねらいもある。(後略)

「大学産業院」とは聞きなれない言葉なので調べてみたら、徳島大が立ち上げた大学支援機構のホームページに説明がありました。そこでは企業の設立ができない大学が収入を得るためのシステムの代表的なものに「大学病院」があり、この考え方を他学部・他大学院に適用させたシステムであると書かれていました。以下、引用です。

実は、大学において「稼いでいるシステム」があります。それは大学病院です。
医学部には基礎系の教員と臨床系の教員がおり、臨床系の教員は大学病院において診療などを行い「稼いで」います。このシステムを他の学部あるいは大学院にも構築することにより、運営費交付金の削減をカバーできないかと考えています。
つまり、基礎系の教員と応用系の教員を希望に応じて分け、応用系の教員は「稼ぐシステム」で実際に企業を設立し、事業を行い収益を大学に還元するシステムです。
その「稼ぐシステム」をここでは 「大学産業院」と仮に名付けています。 
大学支援機構ホームページより

「稼ぐシステム」というのは、どストレートな表現ですが、まさにそれが必要なのでしょう。朝日新聞の記事で、徳島大の学長が「大学運営が厳しい現状では、若い研究者が雇えず、新たな研究が進められない」と語っており、この緊迫した状況と「稼ぐシステム」という言葉にはシンクロするものを感じます。

また、大学はリソースが多いのに稼ぎにくい組織です。学校法人であるために制限がかけられ、大学はかくあるべき!という学内外の目もあります。大学産業院は、大学が大学らしく稼ぐためにどうすればいいかという問いに対し、真剣に考えたひとつの回答のように感じました。

徳島大のように生き残りをかけて、いろいろと画策する大学がある一方、若者人口が減るのだから大学は淘汰されてしかるべきと考える人もいます。ある程度、淘汰されるのは仕方がないことなのかもしれません。しかし、大学の役割は、学生のための教育機関だけではありません。とくに地方の大規模大学は、その地方の拠点として、文化をつくり、地域の産業を起こし、学ぶことの楽しさを子どもや大人に伝えるという大切な役目を担っています。今回の徳島大も、まさにそんな大学のひとつです。自分たちが生き残ることが、地域のためであり、延いては広く社会全般のためになる…、そんな気持ちがあるからこそ必死に動いているのでしょう。

見ようによっては、今の少子化による影響は、学生のための教育機関という大学の一つの側面から収入を得るのが難しくなるだけ、とも捉えることもできます。大学、とくに地域の大規模大学には、これ以外の役割も多様にあるわけです。ならば「大学産業院」のように別の役割にクローズアップして、そこから「稼ぐシステム」をつくるというのはありなように思います。でも、これをするのであれば、まずは大学が学生への教育以外にも、いろんな役割を担っていることを社会に広く知ってもらうことが大事です。理解がないところに支援は生まれませんから。そう考えると、うちの「ほとんど0円大学」のような活動も、ちょっとは役に立っているのかなぁと、曲解かもしれませんが、少し思ったりするわけです。

0 件のコメント:

コメントを投稿