何かしらのものやサービスを購入するとき、表と裏ではないですが、オフィシャル情報とユーザー情報の二つの情報をもとに判断するというのが、今のメジャーなやり方なように思います。SNSや口コミ掲示板など、ユーザーからの情報を簡単に手に入れられる環境が整ったことが関係しているのでしょう。この趨勢(?)に乗っかってか、文科省でも学生視点、つまりユーザー視点の情報収集と発信に取り組む動きがあるようです。
以下、YAHOO!ニュースより。
学生の視点で、大学の満足度調査へ…文科省
文部科学省は来年度から、全国の大学生に学習時間の長さや授業の満足度などを聞く調査を開始する。各大学の教育について、学生の視点から評価しようとする取り組みで、結果を公表することによって、大学に改革を促し、国からの助成額の増減に反映させることも視野に入れている。(後略)
今回の取り組みで得られた評価は、受験生の大学選びの参考資料になるだけでなく、助成額増減にも関わる可能性があるようです。とりあえず内容云々は後述するにして、ニュースを読んでみた感想として「文科省センスないわぁ~」と思いました。
学生視点のぶっちゃけた意見やホンネというのは、大学を知るうえで、重要な要素になります。でも、これはあくまで“裏”の情報だと思うんですね。これを“表”つまり、オフィシャルなところがやってしまうと、とても歪なものになるような気がします。
学生視点の意見というのは、あくまで個人の意見であり、他大学と比べるようなものではありません。一人ひとり背負っているものが違うし、学力も意識も異なります。極端な話、失恋した直後にアンケート依頼がきたとか、仲間うちで盛り上がっているときに回答したとか、そういった大学とは関係ない要素で書く内容が変わる可能性が十分にあります。それにそもそも文科省の調査だと、SNSや掲示板に書くような、ぶっちゃけたホンネを書く可能性は低く、真面目で退屈な猫かぶった意見を書く学生が大半でしょう。
また、SNSや掲示板であれば、体裁からして書かれている内容が個人の意見・感想であることが一目瞭然です。でも、最終的にどんな表現になるかはわかりませんが、文科省発表になると、それは個人の意見ではなくオフィシャルなデータとして受け止められる可能性が高い。これって、とても危険なことのように思います。
さらにいうと、すでにユーザーのぶっちゃけ情報と接することができる場なんて、ウェブ上にいくらでもあるのです。そんななか、わざわざ文科省が大枚をはたいてやる意味がようわかりません。
うがった見方をすると、学生視点の評価の比重が高まると、教育現場の「サービス業化」がさらに進む可能性もありえます。学生がいいと思うことと、学生にとっていいことは、必ずしもイコールではありません。学生がいいと思うことばかりやる大学が増えると、この国そのものが危うくなるかもしれません。
なんにしろ、情報の出し方によって印象が大きく変わるので、正しく意図と内容が伝わるように、表現や伝え方を慎重に吟味する必要があります。それに個々の大学の評価に直結するものにするのであれば、他大学と正確に比べられる調査設計が必要です。考え出すと、かなり手間のかかる取り組みになる気がします。最終どのようなかたちでアウトプットされるのか、引き続き注目していきたいです。
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