2018/09/29

大学によるコミュニケーション能力育成の限界と、その突破口(敬愛大)


ばっさりと断じてしまうなら、ほとんどの学生にとっての大学は、社会で働くための知識やスキルを身につけるための場所です。研究者をめざす人や卒業後ぶらぶらする人もいるでしょうが、それはやはり少数派です。大学もそれがわかっているから、コミュニケーション能力をはじめ、仕事で役立つスキルの育成に力を入れ、それを入試広報のアピール材料としても使います。しかし、よくよく考えると、これら能力の育成は、畳の上の水練というか、大学がやるのはなかなか大変なミッションなように思うのです。

以下、大学プレスセンターより。

敬愛大学が、ビジネスマンと学生の合同講座「産学連携アクティブラーニング講座」を開講 -- 「できない理由より、できる工夫を探し続ける」体験プログラム 
敬愛大学(千葉市稲毛区/学長:三幣利夫)は、今年度から「産学連携アクティブラーニング講座」を新規開講している。これは、同大キャリアセンターと経営学科の彌島康朗特任教授が中心となって運営している講座で、講義のほかにシミュレーション教材に取り組み、効率的なチーム運営と情報活用スキルを駆使して最大のパフォーマンスを目指すもの。主に地元企業のビジネスマンと在学生が合同で受講している。異なる背景を持つほかの受講生とチームを組むことで、それぞれの良さを引き出して相乗効果を上げるためのチーム運営に取り組む。(後略)

今回、取り上げたのは敬愛大学の社会人と一緒に学ぶ合同講座です。最近、この手の講座が少しずつ増えてきているように感じます。それはとてもいいことで、大学で仕事に役立つスキルを育成するのであれば、こういった講座は不可欠だと思います。

日本の大学では、同じくらいの年代で、同じくらいの学力で、同じような学問領域に興味がある学生が集まって学習をします。知識や専門的な技能を身につけるのであれば、この環境でも問題なく身につけられるのでしょう。しかし、コミュニケーション能力やら、リーダーシップ、協調性といったものを身につけたいのであれば、この環境ではかなり厳しい。いや、できなくはないのです。ただ、“仕事で役に立つ”となると、だいぶ難しいように思います。

というのも、コミュニケーション能力等は、よく使われる言葉ではあるけど、とても感覚的な言葉で、正解というものがありません。同じフレーズであっても、時や場所によって求められる具体的な内容が異なっていきます。たとえば、コミュニケーション能力一つをとっても、ゼミ室で求められるものと、企業の会議室で求められるもの、それに家庭のリビングで求められるものは、かなりの違いがあります。この違いというのは、言葉で表現するのは難しいし、たとえ表現できたとしても、その環境に身を置かないと結局のところ腹落ちしません。冒頭で述べたように、水泳を学ぶにはプールか海に行くしかないのです。

社会人と一緒にプロジェクト的に学ぶというのは、まさに大学のなかにビジネス環境というプールを設置することだと思います。ちなみに、企業からの依頼で商品開発等をする授業も最近は増えています。この種のものも、これら能力育成に役立ちますが、図式は大学×企業であり組織の壁をぶち破ってはいません。同じチームとして、社会人と学生が同じ土俵のうえに立って学ぶ、今回のような学び方のほうがより効果があるように思います。

今後、大学は生き残るために、日本の若者以外を何とかして学生として取り込んでいかないといけません。学び直しを考える社会人も重要なターゲットです。これら社会人とキャリア教育が上手くかみ合えば、大学による(ビジネスシーンで役立つ)コミュニケーション能力等の育成は、より実のあるものへと進化していくのではないでしょうか。

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