大学の非常勤講師の労働環境が過酷なことは、時折ニュースにもなり問題視されています。少し前の記事になりますが、東京大学でこの状況の改善につながりそうな決断をしたので、今回はこれを取り上げます。
以下、朝日新聞デジタルより。
東大、5年超の非常勤講師を無期雇用 組合は広がり期待
東京大学が4月から、5年を超えて働いた非常勤講師を無期雇用に切り替える方針であることが分かった。これまでは転換までの期間を10年超とする国の特例を適用してきたが、一般の有期雇用の労働者と同じ5年超を転換のタイミングにする。(後略)
「非常勤講師」というと、何となく常勤の教員では補えない部分をカバーしてくれるサブ的な役割の人たちを想像します。しかし、朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」によると、教員のうち半数が非常勤講師で、さらに常勤のうち四分の一が「期限付き」の教員とのこと。大学で教鞭を執っている人のなかで、安心した身分で教えている人の方が少ないのが実情なのです。
現在、公立の小中学校でも講師が教鞭を執ることが増えてきていて、それが問題になっているといいます。では、どのくらいの割合なのかというと、2017年度の文部科学省の調査では、公立の小中学校の常勤講師が占める割合は7.4%です。大学で有期雇用の身分で教鞭を執っている人は、およそ63%なわけで、それぞれ問題視されているものの、その割合は雲泥の差があります。
もちろん、単純に大学と小中学校(しかも公立)のみを比べられるものではありません。しかし、教育者という意味では、どちらも同じく大切な役割を担っている人たちです。見ようによっては7.4%でも問題になるわけで、大学の場合、大、大、大問題だと捉えることもできます。そして、実際にそうなのではないでしょうか。
教育には、たった一つの正解があるわけではなく、教える側の試行錯誤や丁寧な対応によって子供の成長は変わっていきます。モチベーションと能力が成果に直結するわけです。有期雇用であっても、情熱を持って上手に教えられる方はたくさんいるのは知っています。でも、終身雇用で働く方が、有期雇用で働くよりもモチベーションが高まるのは言うまでもありません。
小中学校であれ、大学であれ、教育は少子化のあおりが直撃する業界だから、業界が縮小するのに対応できるよう無駄をはぶくのは当然です。しかし、ビジネスである前に、教育は教育です。社会をつくるために、人を育てるために、なくてはならないものです。東大の決断は、従業員の雇用を守るという意味でも重大ですが、日本の教育の質をこれ以上さげないという意味でも意味がある判断だったように思います。
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