2019/03/30

ニッチな分野に手をさしのべる。大学だからこそできる社会貢献(神田外語大、東京外国語大)


文系の研究活動の魅力や凄味は、ときに内容のマニアックさから醸し出されることがあります。しかしマニアックな研究は、日常と隔てた世界なように感じてしまったり、あまり実用的に思えなかったりすることがあります。今回、見つけた神田外語大学と東京外国語大学の取り組みは、マニアックでありながらも、ちゃんと研究を実用的なサービスに落とし込んでいました。個人的には、これ、けっこうグッときました。

以下、大学プレスセンターより。

神田外語大学が東京外国語大学との共同開発による動画付き無料ウェブ教材「インド英語会話モジュール」を公開 
神田外語大学(千葉市美浜区/学長 宮内孝久)が東京外国語大学(東京都府中市/学長 立石博高)との共同開発による「インド英語会話モジュール」を無料で初公開。これはウェブ教材「英語会話モジュール」のアメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語、ニュージーランド英語、カナダ英語、アイルランド英語、シンガポール英語に続く第8弾のモジュールとなるものである。インドの民族的・言語的多様性を反映した極めて複雑な英について、丁寧な発音と語彙の解説付きで40の会話シーンを紹介。大学レベルの学習者のみならず、社会人や中高生などの一般人のリスニング強化に寄与する教材となっている。(後略

神田外語大学×東京外国語大学 英語会話モジュール

「英語会話モジュール」は、世界中のさまざまなエリアの英語の違いを研究し、その研究成果を生かしてつくられた英語教育のウェブ教材です。アメリカ英語、イギリス英語ぐらいなら、なんとなくわかりますが、今回、開発されたのは、なんと「インド英語」。私のような日常生活で英語を使わないものの感覚からすると、かなりマニアックです。神田外語大と東京外国語大は、今回のものを含めると、なんと8つもの英語会話モジュールを開発、公開しているとのこと。単に英語といっても、いろいろなエリアの英語があるんですね。

試しに「英語会話モジュール」を利用してみました。モジュールには40シーンの会話が掲載されており、パソコン画面で見ると、ページ右側に動画が流れ、ページ左側に動画に合わせて会話内容の字幕が日本語と英語で表示されます。どのモジュールも動画を見た感じだと、登場人物はおそらくすべて現地の人。背景は合成ですが、現地の風景が表示され、なかなか臨場感があります。会話の字幕をマウスオーバーすると、発音や会話を上の諸注意、別表現についてなどの情報が細かく表示されます。無料公開とは思えない完成度でした。ちなみに40シーンの会話は、8つのモジュールすべてで統一されているので、見比べていくと、なんとなく国民性が見えて面白かったです。

英会話画面は、英語が苦手でも見ているだけで面白い

有料のものを含めれば、英語のウェブ教材として、このモジュールより充実しているものはあります。でも、インド英語やアイルラド英語、シンガポール英語といったニッチな英語の教材で、無料でここまで充実しているものはめずらしいように思います。

需要が高い分野にサービスを提供するのは、大学がやらなくても企業がやってくれます。ですが、ニッチな分野で質の高いサービスを提供するとなると、企業では採算がとれず、なかなかできません。しかし、その分野を専門的に研究する研究者を複数抱える大学であれば、サービスを実施する費用を比較的安価に抑えられるし、たとえ直接的な利益にならなくても、研究のアウトリーチとして、また社会貢献として取り組む意味や価値があります。

ニーズこそ少ないものの、必要としている人たちがいる。そういう分野に手をさしのべるのは、もしかしたら大学の役目の一つなのかも知れませんね。それに、マニアックな研究がマニアックな分野で必要とする人たちをサポートしてくれると、社会はもっと便利になるし、じわじわと大学の研究が身近になってくるように思います。

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