国や大学からの研究費が削減される昨今、研究者は研究能力だけでなく、研究費を自力で獲得する力も必要とされるようになりました。この研究費獲得の手法として、最近、注目されているのがクラウドファンディングです。以前、本ブログ記事でもこれについて取り上げたことがあるのですが、このたび、このクラウドファンディングで目玉が飛び出るような偉業を、とある大学院生が成し遂げました。
以下、大学ジャーナルONLINEより。
東京大学発「次世代データベース」プロジェクトが国内クラウドファンディングで2.6億円調達
東京大学発のプロジェクト「日本発オープンソース・データベース『APLLO(アポロ)』」は、日本唯一の投資型・購買型・寄付型のすべてが行える総合型クラウドファンディングサービス「宙とぶペンギン」で、クラウドファンディング史上国内最高額276,000,000円を達成した。(後略)
クラウドファンディング史上国内最高額です。2億7600万円です。しかも、この資金調達を成功したのが、大学教授ではなく、東京大学大学院学際情報学府博士課程に在籍する学生さんだというのです。これ、かなりインパクトありませんか?
面白い大学発商品や研究がないかを調べる一環で、時折、大学のクラウドファンディングをチェックしていたのですが、目標金額は高くても数百万円という印象でした。今回は、その金額をはるかに超えた金額を集めています。研究費の“足し”にクラウドファンディングを利用するのではなく、研究費すべてをクラウドファンディングでまかなっています。しかもそれを、とても優秀な方とはいえ、博士課程の学生さんが実現しています。なんというか、すごく“研究者ドリーム”を感じさせる出来事です。
もう一つ面白いのは、今回、資金を募ったのは「次世代データベース」の開発プロジェクトなのですが、「宙とぶペンギン」内のプロジェクト紹介ページで、当事者の学生さんが「野心的な試みで、成功する確率は低いかもしれません」と、ご丁寧に太字&色つき文字にして、しっかり明言しています。つまりこのプロジェクトが、わかりやすい儲け話で、それにつられて皆が出資したわけじゃないんです。さらに、このデータベースが開発に成功したあかつきには、オープンソース化するとされています。出資するしないに関わらず、プロジェクトの成果は、全員が利用できるわけです。なのに、これほどの資金が集まった。そこには、損得だけでは説明がつかない、新たなカルチャーのようなものすら感じさせます。
これまでクラウドファンディングによる研究支援は、出資者にモノであれ、経験であれ、何かしらのバックがあることが、出資するモチベーションにつながっていると思っていました。もちろん、これはこれであるのでしょう。でもこれだけじゃなく、今回のように確実なバックが見込めなくても、価値を見いだせる研究には多額の資金が集まることがあるのだと知りました。この大成功は、クラウドファンディングにチャレンジできる研究の幅をグッと広げたように思います。伝え方によって資金の集まり方が変わるだろうし、クラウドファンディングに向き不向きな研究というのもあるはずです。とても有効な手立てなので、いち研究者ではなく、大学としてどう活用するべきかを、方針を立ててもっと本格的に考えていくべきなのかもしれません。
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