学問や研究の魅力をどう伝えるかというのは、個人的にすごく興味のあるテーマです。大学によっては、面白い取り組みでこのテーマに果敢にチャレンジしているところもあります。今回、見つけた鳥取環境大学も、まさにそんな大学の一つ。これはなかなか興味が湧きました!
以下、朝日新聞デジタルより。
教授らがエッセー風に研究紹介 鳥取環境大
大学で環境問題に対してどんな研究をしているのか広く知ってもらおう――。公立鳥取環境大学環境学部の教授と准教授、講師がエッセー風に研究内容を紹介する「こちら公立鳥取環境大学環境学部です!」を出版した。(後略)
公立鳥取環境大学の環境学部で取り組んだのは、研究をテーマにしたエッセー本の出版です。記事には、先生たち4人がワーキンググループを結成して作成したとあり、どこかの外部業者におまかせしたのではなく、“自分たちで作った”という感じが強く出ており、そこに好感を覚えました。
また記事には、「志願者数を増やそうと『学部の良さ』を全国の受験生に伝える手段」として書籍を作ったと書かれています。私は受験生でもないし、鳥取環境大の環境学部の良さを知りたいわけでもないけれど、この書籍自体にはとても惹かれるものがあります。研究をエッセー風に(つまり、わかりやすく面白く伝える)読み物であることに、すごく興味が湧いたわけです。大学の学問や研究といったトピックは、面白い切り口で丁寧にコンテンツに落とし込んでいくと、受験生はもちろんですが、幅広い世代に響くものができる可能性があるように思います。
多くの大学は、何かコンテンツを作るとき、受験生向けとか、卒業生向けとか、大学との関係性を軸にターゲットを決め、内容を作り込んでいきます。これは作り方として決して間違っていません。でも、この発想だけでコンテンツを作り続けると、ずっと同じような人に、同じような情報を発信し続けるだけになります。まったく異なる視点をもった情報発信を別軸ですることができれば、大学の認知度や見え方はけっこう変わっていくのではないでしょうか。
今回の鳥取環境大の取り組みは、この“まったくの別の視点”のヒントになるというか、実践そのもののように思います。鳥取環境大は受験生がターゲットだといっていますが、実態としてやっていることは、環境学部の学問に興味のある全世代に向けての情報発信です。学問や研究、より平たい表現にするなら、知らない知識や新しい発見というのは、受験生だろうがなかろうが、世代関係なく響くものです。大学は、自校が得意とする分野の、これら情報をいかに魅力的に発信していくかというのが、新しいファンをつくるうえで必要なのではないでしょうか。
さらにいうと、こういった別軸の情報発信は、従来の大学との関係性軸での情報発信にも役立っていきます。受験生にも、卒業生にも、その大学が得意とする分野に興味がある人が一定数いるからです。それどころか、この別軸と、大学との関係性軸が交差するところにいる人こそ、志願度の高い受験生であり、大学に親近感を持っている卒業生である可能性が非常に高い。二つの軸を意識的につくり、これらを上手に交わすことで、大学の魅力はさらに効果的に発信でき、ファンも開拓できるように思います。
大学の学問や研究に関する情報発信は、よくブランディングの一環だと捉えられがちです。でも、鳥取環境大のように、取り回しのよいコンテンツにすると柔軟な使い方ができるようになり、ブランディングになるうえ、入試広報や卒業生向け広報などにも使えたりします。
一度、従来の広報(というか大学の広告)の考え方から離れてみて、幅広い層に受ける自校の強みをどうコンテンツ化するか+それを伝えたい層にどう伝えるか、という考え方で、大学の情報発信を考えてみてはどうでしょうか。あまり絶対という言葉は使わないのですが、これは今後の大学広報で絶対に必要だと、私は思います。
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