なんだかんだいってメディアが発展した今も、受験生向け広報のキーツールは大学案内ではないでしょうか。このパンフレットを見ると、その大学が何をウリにしているのかや、何を大切にしているかがよくわかります。各テーマについて取り上げる紙数であったり、掲載場所であったり、大切の度合いが目に見えて理解できるんですね。こういう観点で考えると、今回、見つけた武蔵野大学の大学案内のステキさがよりよくわかるように思うのです。
以下、大学プレスセンターより。
「大学教員に問う''なぜ大学で学ぶのか''」 -- 20教員によるメッセージを掲載した大学案内パンフレットが完成【武蔵野大学】
武蔵野大学(東京都江東区)の2020年度版大学案内パンフレットが完成しました。11学部19学科の教育活動、就職・進路、キャンパスライフの紹介に加え、巻頭企画「大学教員に問う“なぜ大学で学ぶのか”」として本学20教員が高校生に向けたメッセージを掲載。高校生が進路を検討するときに「大学とは」「何のために学ぶのか」を自ら問いかけるきっかけにしてもらいたいと考えています。(後略)
武蔵野大学大学案内2020 巻頭企画 |
大学案内の“特等席”といえば、間違いなく巻頭部分です。本気で読む人であっても、パラパラめくる人であっても、巻頭部分はまず目にするからです。ほとんどの大学では、大学として一番PRしたいことを、このスペースに持っていきます。しかし、今回の武蔵野大の大学案内は、巻頭企画として「大学教員に問う“なぜ大学で学ぶのか”」として高校生に向けた教員メッセージを持ってきました。
なぜ大学で学ぶのか、は武蔵野大のPRすべき大学の特色ではなく、高校生たちが抱く疑問であり悩みです。この“特等席”を、そういった自校のPRと直接つながらないことに持ってくるというのは、なかなか斬新なのではないでしょうか。しかも、教員メッセージは20名分あり、パンフレットに載りきらなかった詳細メッセージがウェブサイトに掲載されています。
武蔵野大学HP「なぜ大学で学ぶのか」 |
大学からすると、大学案内は自校を選んでもらうためのPRツールです。でも、受験生が求めているものは、突き詰めると大学の情報ではありません。この大学が、自分が行くべき大学かどうかを見極めたいのです。そのために、大学の教学内容はとても参考になる情報になりますが、なかにはそれだけでは判断できない人もいます。判断基準が自分のなかにないからです。そう考えると、武蔵野大のように、まずは、なぜ大学で学ぶのかを問いかけることで、受験生に大学の何を重視すべきかを一度整理するように仕向け、そこから自校の説明をはじめるというストーリーは、理にかなっているようにも思えます。
評価されるというのは、評価できる基準や視点があってこそ。もちろん、武蔵野大の取り組みは、自分たちの大学にとってだけ利するわけではなく、場合によっては他大学の方がいいと判断されることもあるでしょう。でも、受験生のニーズに真摯に向き合うなら、武蔵野大のように1ステップ余分に踏むということはとても大事だし、それをしっかりやろうとする姿勢に好感を覚えます。今後このような取り組みが、いろんな大学に広まっていくと、いつかは偏差値重視の大学選びというものがなくなっていくかもしれませんね。
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