2015/10/10

大学生活の自由とどう向き合うか(近大)


少し昔になります。2008年の東京大学の入学式で、安藤忠雄氏が祝辞のなかで式に同席している新入生の保護者に“子離れ”を訴えたことが話題になりました。子どものハレの日になにを言うかという意見もあれば、そうだそうだという意見もあり、当時はけっこう話題になりました。で、その議論の内容は置いといて、私としては東大でも保護者の影響力が強いのだと驚かされた覚えがあります。

また近年、オープンキャンパスの撮影に行くと保護者と一緒に参加している高校生が年々増えており、ここからも保護者の存在の大きさを実感しています。こういった少し過保護ともいえる保護者に応える、大学のサービスや取り組みはいろいろとあるのですが、今年9月に近畿大学が立ち上げた新しいポータルサイトは、この決定版と言えるかもしれません。

以下、リセマムより。

近畿大学、出欠や成績確認できる保護者向けサイト開設  
近畿大学は、9月14日に保護者向け新サービスとして「保護者用ポータルサイト」を開設した。保護者がパソコンやスマートフォンを使いリアルタイムに学生の学習状況、授業の出席状況や成績などを把握することが可能になるという。

これまでも試験結果等を保護者に伝える大学はありました。でも、今回の近畿大学のサイトではすべての授業の出席状況や学習状況がわかるのはもちろん、それがリアルタイムでわかるというのがすごい。今、息子が授業に出ているかどうかだってわかるわけです。そうとう心配性な保護者でも、これなら安心できるように思います。

しかし、この徹底的に行き渡ったサービスを見て、小・中・高、そして社会人、どの時期であってもここまで管理されることってないんじゃないかと思いました。たしかに、保護者は安心できます。場合によっては、学生たちも安心できるかもしれません。でも、これによって学生時代のとても大事なものが失われてしまうように感じるのです。

大事なものというのは“自由”です。自由であることによって、学生たちは自己を管理する術を知るし、自分と向き合えるようになり、自分について理解します。これは大学だからこそできることだし、大学のうちにしなくてはいけないことです。

とはいえ、自由な時間は大事だから、めいいっぱい自由にさせましょうというのも怖い話です。自由は、薬にもなるけど毒にもなる、場合によっては本人の身を滅ぼしてしまう可能性だってあります。たとえば、大学に通わず引きこもりになってしまるかもしれないし、パチンコにはまってパチプロになるとか言い出すかもしれないわけです。

じゃあ怖いから管理してしまおう、というのもまた違うように思うんですね。正しいのは、怖いからこそ理解し、ちゃんとつきあえるようにする。そして、そうできるように教育とサポートをするのが、“人生でもっとも自由な時間を過ごせる”大学の役目だと思うのです。

ちなみに、この“自由教育(仮)”の対象は、学生だけでなく保護者も当てはまります。保護者は学生(である我が子)の一番の管理者であり、保護者の理解がないと、学生の自由は成り立たないからです。

自由のもつメリットとデメリット、自由だからこそすべきこと、気をつけるべきこと。また、保護者は子どもにどこまでを任せ、どこまでを任せないのか。コレという答えはないでしょう。場合によっては、哲学的な議論になりドツボにはまるかもしれません。でも、話すこと、意識することで変わることはあるはずです。

入学前教育の一つとして親と子で向き合える機会、“自由教育(仮)”をぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。こういった取り組みを通じて学生と保護者が自由を理解することが、学生が成長し、保護者の不安解消するための近道なように思います。

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