大学博物館の企画展や特別展は基本的に学内の研究資料を展示するため、集客を第一目的としないユニークな展示も少なくなりません。今回、見つけた早稲田大学の會津八一記念博物館の企画展も間違いなくその中の一つ。通信講義録を扱った展示なのですが、当時の人たちの向学心の高さを感じ、少し考えさせられました。
「早稲田の通信講義録とその時代 1856-1956」展に寄せて
早稲田大学大学史資料センターでは、2016年度春季企画展「早稲田の通信講義録とその時代 1886-1956」を開催します。 今年は、早稲田大学の前身である東京専門学校が通信講義録の発行をはじめてからちょうど130年目にあたります。といっても、早稲田の通信講義録と聞いて、何のことか思いあたるという人はほとんどいないかもしれません。(後略)
掲載された文章によると、この講義録は70年もの長期に渡って発行され続け、実に200万人を超す人たちが講読したとのこと。試しにインターネットでいくつかの大学の講義録を見てみたのですが、かなりの文字量なうえ、実際の場の雰囲気もわからないので、これで勉強をすすめていくのは相当のやる気がないと無理だと感じました。
しかも、早稲田の通信講義録は有料。金額まではわかりませんが、経済的に恵まれず進学を諦めた人たちが主な購買層だと考えると、金銭的な負担もそれなりにあったのではないでしょうか。こんな状況にも関わらず、70年間も販売が続けられたことを考えると、日本には昔から向学心旺盛な人がたくさんいたのだと感心します。
講義録が販売されていた時代と現在では、通信教育に対するニーズや利用者層も大きく変わってきているように思います。しかし、そうであっても変わらないのは、通信への進学をめざす人たちは、何かしらハードルがあるのに“あえて”大学に進学しようとする強い意志と目的があることです。
そう思うと、通学と通信では、たとえ提供する教育の根幹が同じであっても、受験生が興味を持つポイントはけっこう異なるのかもしれませんね。たとえば、楽しさよりも厳しさ、やりがいよりも成果が、通信をめざす受験生には響くような気がします。
私自身、高校生向けの広報ツールを作成することが多いため、通学をメインに考えてしまいがちなのですが、実際のところより多くの情報を求めているのは、通信をめざす人たちなんでしょう。またこれは社会人向け大学院などをめざす人たちなんかにも、当てはまるように思います。
“あえて”進学する人たちに向けた真摯かつ積極的な情報発信。18歳人口が大きく減っていくことを考えると、これは今後しっかりと考えていくべき広報のテーマになっていきそうです。
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