2016/07/02

日本酒開発、それは商品開発の一番の教科書(神田外語大)


大学発の商品で、もっとも多いものは何か。しっかり調べたわけではありませんが、おそらくそれは“日本酒”ではないでしょうか。ざっと挙げるだけでも、北海道大学の「ポプラ並木」、滋賀県立大学の「湖風」、佐賀大学の悠々知酔」、山口大学の「山口学舎」など、切りがないほどたくさんの大学発日本酒があります。

では、なぜ日本酒が多いのかというと理由はいくつか考えられます。まずは田植えからはじめて、ちょうど1年で商品になるので開発期間がちょうどいいこと。信頼できる酒造メーカーと組めば、商品づくりにまず失敗しないこと。大学発のお酒はちょっとしたおみやげとして好まれる、というのも理由なように思います。

そして、この日本酒開発ですが、実は他の商品開発にない魅力があるのかも、と神田外国語大学の記事を見つけて思いました。ずばり日本酒開発は、大学の商品開発の教科書なのです。

以下、毎日新聞より。


大学倶楽部・神田外語大 
千葉県の酒造メーカーと日本酒を共同企画 
神田外語大学国際コミュニケーション学科の鶴岡公幸教授ゼミが、千葉県酒々井町の酒造メーカー「飯沼本家」と日本酒「SHINDEN」を共同企画した。外国人観光客に日本酒の魅力をアピールするため、商品のラベルデザインのほか、外国語学部の強みを生かして日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、タイ語の8言語による商品紹介リーフレットを作製した。(後略)

今回の神田外大の取り組みは、日本酒×外大という切り口で、海外の人向けに日本酒をPRすることに学生たちが一役買ったというもの。日本酒の開発というと、学生たちが日本酒の味について、アレコレ意見をいって、つくるようなイメージを持ちます。でも、実はそれだけじゃなく、いろんな関わり方あるんですね。

たとえば、つい先日、朝日新聞に記事が載っていた「天弓」は、東北芸術工科大学の学生が関わったものの、日本酒づくりはせずにラベルやネーミングをつくるクリエイティブ部分で協力し、ヒットを飛ばしました。また逆に、以前ほとゼロで密着取材した佛教大学の「佛米! 夢乃酒」は、学生たちが田植えから醸造、販促まですべて関わることで、商品開発の一連の流れを理解するプロジェクトでした。

他にも、大妻女子大学の家政学部の学生たちが取り組む「日本酒文化発信プロジェクト」なんかだと、そもそも日本酒はつくらず、女性の視点で日本酒の普及に取り組むために日本酒カクテルのレシピ活動などに力を入れているし。「hajime」という日本酒は、大学が直接関わらず、大阪大学の日本酒サークルが北庄司酒造店という蔵元と共同してつくっています。

さらにいうと学生が関わらないものもあり、立命館大学の「必勝の酒 勝馬米」のように教員の研究成果をうまく活かしたものや、卒業生が営む酒蔵で醸造したもの、単に大学が発注してつくっているものなんかもあります。

これだけ一つの商品に対して、大学が多種多様な関わり方をしているものは、おそらく他にないんじゃないでしょうか。酒蔵の99.6%(平成26年度、国税庁調べ)が中小企業ということで、比較的柔軟に対応してもらいやすい、というのもあるのかもしれません。

いろいろな日本酒発プロジェクトを見ていて面白いなぁと感じるのは、専門性や興味を上手に活かしているプロジェクトが多いことです。単に大学(学生)が商品開発することを目的にしてしまうと、どれも似たアプローチ、似た内容になってしまいがちです。でも、専門性や興味が全面に出ているものが多いため、かなり千差万別なんですね。極端な話、神田外大や東北芸工大のように日本酒ができてから関わるというものもあるし、大妻女子大のように日本酒をつくらない、というものさえあるわけです。

事例が多いからこそ、こういったユニークなアプローチも出てくるのだと思います。PBLの大切さが叫ばれている今、商品開発プロジェクトは格好の教育の題材です。オリジナリティのあるプロジェクトを打ち出すために、まずは日本酒の事例を調べてみるのもいかもしれませんね。

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