2017/11/03

大学祭の個性は、学びと研究がつくりだす(信州大)


大学祭シーズンまっただ中です。今年は、先週、先々週と土日に台風が来てしまったので、大変だった大学も多いのではないでしょうか。

大学祭というと、学生たちによる出店があふれ、芸能人によるライブがあってと、まさにお祭りのイメージが強くあります。でも、大学祭にはもう一つの側面があるのをご存知でしょうか? 今回、見つけた信州大学医学部の取り組みは、この側面がよくあらわれていて、とてもいい感じでした。

以下、朝日新聞デジタルより。


信大医学部の学園祭が復活 住民ら医学体験 
松本市の信州大学松本キャンパスで28日、「医学展」が始まった。医学生がどんなことを学んでいるのか、地域住民や中高生に知ってもらう目的で、今回が第1回。医学に興味がある小学生や高校生、医学生の家族などが訪れ、実技体験や展示などを楽しんだ。(後略)

「医学展」のサイトをのぞいてみると、なんとこの大学祭、出店やライブはなく、実技体験や展示、講演会、ミニレクチャーなどが催しの中心なんですね。そして、サイトに掲載されているチラシには「地域の方に、もっと信州大学医学部を知ってほしい!」の文字。ここから強く感じるのは、自分たちが楽しむための大学祭ではなく、地域の人に楽しんでもらうためのイベントだということ。そして、この大学祭で伝えたいのは、医学部そのものについてなんですね。


「医学展」のイベント説明ページ、地域を強く意識している

冒頭で、大学祭にはもう一つの側面がある、と書いたのはまさにこれです。大学祭は、大学(そして学部)の学びや研究を、地域に発表する場だと思うのです。自分たちが、今、こういうことを学んでいる、大学としてこういう研究を進めている。講演会やシンポジウムで、こういう情報を発信することはあっても、これら学術イベントは敷居が高く、本当に興味がある人しか参加しません。それよりも間口を広げ、カジュアルに大学の専門性に触れてもらう。そのための場として、大学祭は絶好のチャンスになります。

実際のところ、たくさんの大学がこういった学びや研究をテーマにした催しを、大学祭でやっているのは知っています。でも、前面に押し出しているところは少ないです。勝手な推測ですが、こういったイベントは地味で、キャッチになりにくいと思われているからかもしれません。でも、です。これまでにいくつも大学祭に行きましたが、印象に残っているのは学びや研究が前に出ている大学祭でした。

だってですよ、出店やライブは、わざわざ大学祭に行かなくても他で楽しむことができるわけです。しかし、学びや研究というのは、大学じゃないとなかなか体験できません。

単科大学の大学祭は、これら学びや研究の要素が強く味わえるところが非常に多いです。たとえば、東京農大の「収穫祭」は、学生たちがつくった農作物や加工食品が並び、毎年多くの人でにぎわいます。東京外大の「外語祭」は、学生たちが「語劇」という、自分たちが専攻している国の言葉で演じる劇が人気だし、東京海洋大の「海鷹祭」はマグロの解体ショーなんかをやっています。これら大学の大学祭は、自分たちの専門領域を上手にエンタメに昇華させています。

大学の学びや研究を、どうしたら社会の人たちに伝えられるか、どうしたらこれらを活かして楽しんでもらえるか、この視点がないことには、大学祭に個性は生まれないように思います。もちろん単科大学よりも、総合大学の方が個性を発揮しにくいというのはわかります。でも、今回の信州大医学部のように、学部単位で独自に、かつ積極的に動き、学びを発信していった事例もあるわけです。もしこんな学部がいくつも集まって総合大学の大学祭をしたら、単科大学の大学祭よりもさらに魅力あふれたものになるように思います。学部間で対抗意識バチバチの大学祭とか、絶対に行ってみたいです。

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