動画を使った広報は、近年、大学広報でもだいぶ浸透してきました。動画はインパクトがあるうえ、短時間で多くの情報を伝えられるため、広報ツールとして優秀です。でもその反面、ちゃんとつくると予算が張るうえ、多くの高校生はデータ通信量に制限がかかるのを嫌がり、なかなかスマホで動画を見たがりません。そういう意味では、魅力があるものの使いどころが難しいツールです。青山学院大学が、この動画を他にない思い切った使い方で大学広報に活用しはじめました。受験生に効果的かどうかはさておき、これはなかなか衝撃的です。
以下、大学プレスセンターより。
青山学院大学がインターネットTV局「青学TV」を開局
国内の大学で初となる大学独自のインターネットTV局「青学TV」が開局された。青山学院大学は、インターネット上に情報が氾濫する時代に、大学の社会的使命のひとつとして「学問的裏付けのある正しい情報を市民に提供すること」を考え、楽しく動画で情報を提供していく。この青学TVで紹介される動画は、研究分野からスポーツ、学生生活まで多岐にわたる。(後略)
青学TVには、サイバーエージェントの藤田晋氏のインタビューも掲載 |
この取り組みの何よりも斬新なのは、動画を広報のワンツールとして扱うのではなく、テレビ局という一つのメディアとして取り扱うことです。テレビ局という言葉には、少なくとも動画を頻繁に配信すること、複数のチャンネルがあり、複数のターゲットに向けて情報を発信するという意味合いが含まれているように思います。紙媒体に当てはめるなら、パンフレットをつくるのではなく、出版社を立ち上げると言っているわけで、規模感とか内容とかそういうことでなく、根本が違うわけです。
じゃあ、実際どんなテレビ局なのかのぞいてみると、開局してまだ数ヶ月とはいえ、かなりコンテンツが充実していました。チャンネルは、現在、全部で8チャンネル。青学に関連する話題の人を特集する「青アンテナ」や、青学の学びをコンパクトに紹介する「アオ・ガク・モン」、毎週水曜日更新の「今週の青学」などなど。バラエティ豊かです。しかも、これらコンテンツが毎週、複数配信されており、そのエネルギーには脱帽します。
コンテンツの質としては、プロがつくるものに比べては、やはり粗さとゆるさが目立ちます。ものによっては途中でダレてしまうものもあり、構成にひと工夫必要かなという気もしないでもありません。ですが、この“取って出し”のつくりだからこそ、リアリティと親しみやすさがすごく感じられるんですね。これは、これまでの大学のコミュニケーションにはなかった強みです。
今回のプレスリリースに目を通すと、ターゲットは大学関係者や社会全般とあります。高校生はメインターゲットではないのでしょう。しかし、2020年の東京オリンピックに向けて、無料のWifiスポットは増えるだろうし、インターネット環境はますます発展していくのは間違いありません。高校生たちが、今よりもっと気軽に、直感的に、動画を見る時代はすぐに来るでしょう。そう思うと今の段階からノウハウを積み、コンテンツを蓄える、青山学院大の取り組みは、必ず大きなアドバンテージになるはずです。
そして、このノウハウというのは、大学が動画を使って高校生や地域とコミュニケーションをとるうえでの企画のポイントであったり、見せ方の勘どころだったりするわけです。単に動画クリエイターを外から引っ張ってきたらできるというものではありません。トライ&エラーの繰り返しが必要なことです。
なんにせよ、青山学院大がチャレンジしていることは、これまでとは異なる先進的な広報です。どう発展していくか、かなり気になるところです。
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