今回はこれの続きで、では、どうしたら、この状況を改善できるかについて考えていきたいと思います。
そのため、入試広報で取り組むのは、あまり得策ではない。では、どうするべきかですが、思うに方法は二つあります。
一つは、大学が入試広報ではなく、社会貢献として取り組む方法です。この場合、公開講座などと同じように、大学の知を社会に還元する施策の一つということになります。
たとえば、学問を知る、などのテーマで高校生を対象としたシリーズものの無料公開講座を展開するというのもいいかもしれません。また、Webを使った取り組みだと、さらに多くの人が見ることができので、効果が格段に上がるように思います。
実際に、今、挙げた取り組みに近いものとして、国立大学を中心に複数の大学が取り組んでいるオープンコースウェアがあります。オープンコースウェアは、授業動画や授業で使った資料を、ウェブ上で無料で公開する取り組みです。学問紹介ではないのですが、これら授業の具体的な情報は学問をイメージするのに非常に有用な情報になります。
特に、東京大学が取り組むオープンコースウェア「Todai Open Course Ware」にある「学術俯瞰講義」は、一つのテーマをさまざまな学問の視点から語るもので、高校生には少し難しいかもしれませんが、学問の魅力を強く感じることができる良コンテンツです。
次に二つ目。これは大学コンソーシアムなどの大学を横断する組織や行政、NPOなど、大学外の組織が中心となって取り組む方法です。この場合、一つの大学がやるわけではないので、広報的な要素が取り払われ、情報の信憑性が増すように思います。しかし、学問紹介はある程度、数がないと意味をなさないと思うのですが、大学以外の組織には学問について語れる研究者や教員があまりいないため、コンテンツを増やすのは至難の技です。
この問題を解決するには、いろいろな大学や研究機関の研究者や教員が、自から学問の魅力を伝えようと思える仕組みづくりが必要になります。たとえば、若手研究者や院生が自身の研究内容のスピーチ動画を、学問系統ごとにカテゴライズしてアップするサイト、というのはどうでしょう。これなら、受験生たちはさまざまな学問に手軽に触れることができるし、各動画掲載ページに研究者のプロフィールや連絡先を載せたり、コメント投稿機能をつけたりすることで、若手研究者たちの交流の場としても活用できます。
若手研究者にとって、年齢や立場の似た研究者の仕事を知るのは良い刺激になるし、専門外の研究に触れることは、学際的な視点で自身の研究を捉えなおすきっかけになるかもしれません。
実際にやるなら、もっともっと内容を詰めていく必要がありますが、実現できればかなりステキです。
この取り組みは、受験生に学問とは何かを伝え、若手研究者に交流拠点を提供し、さらに研究熱心な研究者たちの言葉を通じて、学問がいかにエキサイティングなものなのかを、受験生の心に印象づけていきます。
受験生にとって、どこで学ぶかは大事ですが、何を学ぶかはそれと同じか、それ以上に大事なことです。学問について伝える取り組みが、大学内外で積極的に行われることを、ぜひ期待したいと思います。
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