大学広報では自校の教育の質の高さをいかにして受験生たちにアピールするかが大きな課題です。しかし、ただ言葉や文章で、ちゃんとやってますよ、と伝えたところで、他大学も同じことを言っているので、なかなか納得してもらうことはできません。
そんな中で、ソーラーカーやロボット、人工衛星などの開発プロジェクトを教育に取り入れ、その開発過程や結果を社会に発信することで、教育レベルの高さをアピールする大学があります。今回、見つけた大阪府立大学の取り組みも、まさにその一つです。
大阪府立大は14日、学生が中心になって開発した超小型衛星「OPUSAT(オプサット)」を公開した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH2Aロケットに相乗りして、鹿児島県の種子島宇宙センターから2月28日に打ち上げられる。(後略)
記事を見てみると、プロジェクトを立ち上げたのは2010年11月で、完成までに4機の試作機をつくったとあります。これがどれほどの大変さなのかは、人工衛星についてド素人の私にはうまく想像ができません。でも、関わった学生たちには相当な達成感があったように思います。
以前、『フツーな大学生のアナタへ』という、学生のロングインタビュー集をつくったことがあります。そこに出てくる学生たちは、第一志望をすべったり、友達ができず大学を辞めたいと思ったことがあったり、学生生活のスタートをうまく切れなかった学生たちです。そんな学生たちが、何かのきっかけでスイッチが入り、充実した大学生活を送るようになった経緯をかなりじっくり聞いてまとめています。
この本のインタビューをする中で、学生たちの意識はじわじわと変わることよりも、何かをきっかけに大きく変わることの方が多いのだと感じました。
そのスイッチになるものは人によってインターンシップであったり、ボランティアであったり、まちまちなのですが、共通しているのは、自分の思っている“自分”では到底できないことを自分がやってのけた、という達成感を味わうことです。やればできる、を肌で理解したと言ってもいいかもしれません。
大阪府立大で人工衛星の開発に携わった学生たちも、きっとこの感覚を強烈に味わったのではないでしょうか。
技術力の高さについ目がいきがちですが、実はそれだけではなくて、開発に携わることそれ自体が学生たちにとって、またとない成長のきっかけになります。
そういう意味では、自分に自信がない人にこそ挑戦して欲しいし、トップ校よりも第二志望、第三志望になることが多い大学にこそ、これら取り組みは充実して欲しい。さらに言うと、これから大学生活をいかようにもデザインできる1年生を主な対象として、こういったプロジェクトが増えていけばいいなと思ったりします。
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