2018/10/07

「大学教育」と「大学経営」、2つの視点から理想の学びを考える(北海道科学大)


いかにしてよりよい教育をつくり出していくかは、すべての大学に共通した課題です。この課題に対してのアプローチとして、こう来たか!という企画を北海道科学大学がやるようなので、今回はこれについて取り上げてみます。これからの大学教育には、“こっち側”の視点がけっこう大事になりそうです。

以下、大学プレスセンターより。


北海道科学大学が11月3日に特別講座企画「COLORS Project -01 『今、学生が本当に受けたい講義』」を開催 -- 元プロ野球選手の森本稀哲氏、3DCG女子高生のSayaらが登場 
北海道科学大学(札幌市手稲区)は11月3日(土・祝)に「COLORS Project -01」を開催する。これは、同大の協学会が2018年2月28日に創立50周年を迎えたことを記念して行われるもの。「今、学生が本当に受けたい講義」をテーマとして、元プロ野球選手の森本稀哲氏、ヘアメイクアップアーティストの福士智子氏、avexディレクターの米田英智氏、3DCG女子高生Sayaの製作者であるアーティストユニットのTELYUKA、エンジニアの佐野和哉氏らを迎え、普段とは違う、この日限りの講義を多数用意した。知的探究心をくすぐる、最高の学びの1日を提供する。要予約、参加料無料。(後略)


今回の取り組みは、北海道科学大学の学部生・大学院生・教職員から構成される「協学会」が立ち上げた企画です。プレスリリースやウェブサイトを見ているだけでは、「今、学生が本当に受けたい講義」の定義づけの文章が少しよくわからないし、どういうプロセスでこういう講義内容になったのか詳しく知りたい気もしますが、テーマ設定としてはとても面白く感じました。

通常、講義というのは「学生が受けたいこと」ではなくて、「(その学問を専攻する)学生が受けるべきこと」から生まれます。今回は、受け手が送り手になっているというか、発想が真逆なんですね。それを実際にやってしまうというのが興味深いです。しかも、オープンキャンパス内の企画であるとか、そういった“学生に!“と言いつつも、横目で受験生を見ているわけではなく、単体の企画として純粋に学生のためにやっているところに好感が持てます。

でも、受け手が送り手に……と書いたのは、あくまで「大学教育」の視点に立った場合で、「大学経営」の視点に立つとまた変わります。経営者からすると、学生が面白いと思う講義でないと受験生が集まらないわけで、そういう意味ではこの講義はストレートに必要な講義になります。

「大学教育」と「大学経営」は相反するものではないし、うまく融合していくことが、これから受験生が確実に減っていく未来に向けて、大学がめざすべき学びのように思います。とくにこれは私立大学にとって必須といっていいでしょう。これを模索するうえで「今、学生が本当に受けたい講義」というのは、とても大切な切り口になる気がします。

さらにいうと、大学が長年取り組んできたファカルティ・デベロップメントという視点は、どこまでいっても既存の学びのブラッシュアップです。まったく新しい発想を現状にぶつけていかないと、教育内容のイノベーションは加速しません。そのイノベーションのきっかけを、学生たちから起こせたら、ちょっと痛快ですよね。

北海道科学大の協学会は、これまでの大学にはない新しい枠組みの組織なようで、学生の意見を「大学教育」や「大学経営」に届けられる可能性を感じました。こういう組織が活発な大学の、これからをぜひ見ていきたいです。

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