2015/12/12

大学公開講座はまだまだ進化する(東大)


公開講座、オープンカレッジ、市民講座など、名前は変われど、ほぼすべての大学で一般の人たちを対象にした講座を開催しています。これら講座は非常にバリエーションに富んでいるものの、見るからに難しそうで参加するのに二の足を踏んでしまうものも少なくありません。

そんななか、学術的な話しが苦手な人でも、ついつい参加したくなるユニークな公開講座を東京大学で開催されているようです。私的には、これからの公開講座を考えるうえで、とてもいいお手本になる講座なんじゃないかと感じました。

以下、Yahoo!ニュースより。

「バカ田大学」開講なのだ 早稲田の隣でなく東大で 
漫画「天才バカボン」で「入学も卒業も日本一難しい難関校」として描かれる「バカ田大学」。その名のついた公開講座が今月、東京大学で始まった。原作者の故赤塚不二夫さんの生誕80年を記念した企画。現実世界に登場した「バカ田大学」の開講なのだ。(後略)

この公開講座の面白いところは「天才バカボン」という誰でも知っている漫画を題材にしていること。これだけで、普段、大学と接点がない人でも目に留まる可能性がグンと高まります。

さらにに興味深いのは講座の組み立て方です。公開講座には一つのテーマについて、一人の講師が話す形式のものが多いように思います。しかし、今回の「バカ田大学」は、「天才バカボン」を大テーマとし、さまざまな講師が自らの専門分野を切り口に小テーマを立てて語っていくスタイルをとっています。

ちなみに東大には「学術俯瞰講義」という新入生向けの講義があり、これも同じように一つの大テーマをもとに、さまざまな教員が自身の専門分野をもとに小テーマを立てて語るオムニバス形式の授業です。「天才バカボン」のようなポップなテーマはないものの、学問の広がりが感じられ、かなり魅力的な講義になっています。この講義の動画が東京大学のオープンコースウェア「UT OCW」にあるので、興味のある方はぜひご覧になってください。


「UT OCW」には「学術俯瞰講義」以外にも魅力的な講義動画が豊富にある


……話しが横道にそれてしまいました。言いたいのは、オムニバス形式にすることで、講座内容に幅ができ、魅力が増すということ。しかも、今回の「バカ田大学」は、講座のチケット販売サイトを見てみると、学者あり、クリエイターあり、漫画家あり、コラムニストありと講師陣の顔ぶれがかなり多彩です。個人的にはもう少し学者がいてもいいのかな、という気がしないでもないですが、普段、私たちが知っている公開講座とはまったく異なるメンツが並んでおり、かなり胸が踊る感じです。

気になるポイントはまだあります。この講座、大学の公開講座にしては高いんですね。公開講座には無料なものが少なくないうえ、有料なものはだいたい複数コマで1講座になっていて、これを1コマあたりで費用を計算し直すと1500円〜3000円ぐらいが多い。そういったなか、この「バカ田大学」は1コマなんと5500円! しかし、先ほどのチケット販売サイトを見てみると、12月と2月に講師を務めるみうらじゅん氏の回は両方ともすでに完売していました(12月は講義も終了)。

誤解がないように言っておくと、この5500円が高い! ぼったくりだ! と言いたいわけじゃなく、やりようによっては、これだけの価値を感じさせる公開講座ができる。そのことにとても可能性を感じるわけです。

今回の講座の講師は、ほとんどが大学教員ではなく、いろんな分野の著名人です。しかし、この講座の考え方をうまく活用すれば、大学という枠組みのなかでも、話題になる公開講座や、若い人がたくさんくる公開講座をつくり上げることが難しくないように思います。今後こういった人気公開講座をつくるキュレーターみたいな職業がでてくると面白いかもしれませんね。

公開講座というと、参加者の中心がおじいちゃん、おばあちゃんで、どうも地味なイメージがつきまといます。しかし、確かなセンスで組み立てることができれば、公開講座のイメージを変えていくことができるのかもしれない。「バカ田大学」には、それを感じるのに十分なインパクトがありました。

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