2018/06/23

伝えるために魅力をとことん厳選する、引き算的アプローチの可能性(武蔵大)


今後、大学が生き残っていくためには、もっと個性を発揮して、大学固有の強みを磨いていかなければいけない。こういった提言は、よく耳にするし、実践している大学も多くあります。

“ゼミの武蔵”で有名な武蔵大学は、まさにこのフレーズを忠実に実践している大学の代表格です。でも、よくよく考えてみると、この“ゼミ”というのは、他にはない強みがあるというか、けっこう独特なアピールポイントなように思うのです。

以下、大学プレスセンターより。

【武蔵大学】ゼミの魅力発信に特化!受験生向けWebサイトをリニューアルオープン -- キャッチコピーは「ゼミの武蔵は、エモい。」 
武蔵大学(東京都練馬区/学長:山嵜哲哉)は、公式Webサイトの受験生ページをリニューアルし、スマホでの操作性を重視した「受験生入試情報サイト」を、2018年6月4日(月)に公開しました。サイトTOPのキャッチコピーは、10代をはじめ若者世代には一般的に使われる「エモい」という言葉を用い、ターゲットである受験生の興味喚起を意識しています。今後、動画や企画ページなどのコンテンツを通じて、本学最大の特長であるゼミの魅力を、受験生に発信していきます。(後略)

エモい、というキャッチコピーのよし悪しはおいといて、全身全霊でゼミを推すというスタイルは、他ではまず見られないアプローチです。この受験生ページに掲載されているムービーも大部分がゼミのアピールで、学部紹介などは一切ナシ。この潔さは、見ているとある種のすがすがしさを感じます。


とはいえ、武蔵大がゼミをアピールするように、自学の強みを押し出す大学はたくさんあります。たとえば、「教育付加価値日本一の大学」をめざす金沢工業大学は面倒見の良さで評判だし、神戸女学院大学はリベラルアーツに力を入れていることで有名です。でも、これら大学の強みは“合わせ技一本”なんですね。

というのも、金沢工業大であれば初年次教育が充実していたり、ものづくりができる課外活動がたくさんあったりと、さまざまな要素が絡まり合って面倒見の良さが生まれています。神戸女学院大もしかり。少人数教育をベースに、自由度の高いカリキュラムや領域横断型のゼミなどが合わさることで、リベラルアーツをじっくりしっかり育むことができるわけです。これらの大学は、強みをつくりだすために、いくつかの要素を合わせているわけです。

武蔵大の場合、ここが非常にシンプルです。そう、ゼミ、です。ひとつの要素を、強烈にプッシュしています。こうすることによって、かなり具体的に内容を伝えることができるし、具体性があるゆえに説得力があります。1学部ならともかく、全学部をくくって、たった一つの要素で強み・個性を表現するというのは至難の業ですが、武蔵大が文系のみの学部構成であったことと、ゼミという学習スタイルの懐が非常に広いため、これができたのでしょう。

受験生のニーズや社会からの要請は、大学ごとに変わるものではないし、大学の教育内容や教育システムも大学によって変わるかというか、そう大きくは変わりません。なら、個性や強みを顕在化させるために、アピールポイントを極限まで厳選してしまう。武人のように、職人のように、ゼミという一つの技をとことん磨く、武蔵大のスタイルは手法として十二分にありなように思いました。

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