2019/08/16

入学前予約型奨学金が加速させる、日本人による大学のダイバーシティ化(明治大)


一部では好景気と言われながらも、体感的には不景気が続く現在、大学進学の費用は多くの家庭にとって悩ましい問題です。明治大学は、そんな悩める家庭の助けになる、新たな奨学金制度を2020年度よりはじめるようです。この奨学金、「入学前予約型奨学金」というタイプの奨学金なのですが、とにかく規模がどえらいです。

以下、リセマムより。

【大学受験2020】明治大、入学前予約型「おゝ明治奨学金」新設 
明治大学は、入学前予約型給費奨学金「おゝ明治奨学金」を2020年度に新設する。採用候補者数は1,000人以内。申請期間は2019年10月15日から11月15日。採用候補者が一般入学試験に合格すると、4年間(継続審査あり)にわたって授業料年額2分の1相当額が給付される。(後略

今回、明治大に新設される「おゝ明治奨学金」は、なんと採用候補者数が1,000人以内。これはやや規模が小さめな学部であれば、1~4年生まで全員が奨学金をもらえちゃうぐらいの規模感です。面白いのは、この規模のものを入学前予約型で実施するということです。

従来の給付型奨学金は、入試結果や進学後の成績によって受給の可否が決まります。しかし、入学前予約型は、高校3年時に申請し、受験前に奨学金がもらえるかどうかがわかります。そのため、金銭的に厳しかったけど、進学後に奨学金がもらえることがわかったので受験できる、という人が出てくるわけです。これはとくに、下宿等で何かとお金がかかる地方の高校生(とその親にとって、ありがたい奨学金になります。実際、入学前予約型奨学金を設置している大学は首都圏・関西圏に多く、地方在住者のみを対象にしているところも少なくありません(明治大は全国対象)。

近年、文科省の意向もあり、大学進学は“地産地消”の動きが強まっています。実際、これは数字にも現れています(たとえば、この記事)。地方の大学が活性化することは、もちろんいいことなのですが、全国から学生が集まる環境というのは、学生にとって非常に刺激的で意味があります。大学教育のダイバーシティ化は、よく取り上げられるテーマですが、これは留学生の受け入れだけでなく、さまざまなエリアから日本人学生が集まる、ということで実現される部分も多分にあるはずです。

入学前予約型奨学金は、“日本人学生によるダイバーシティ”を推進するために、とても有効な制度になります。さらにいうと、受験生にとってデメリットがなく、自己実現を後押しするかたちで、ダイバーシティを加速させるところがナイスです。このタイプの奨学金は年々充実してきており、今回、明治大という知名度抜群の大学が、思い切った奨学金をはじめることで、さらに活発になる可能性があります。個人的にはそうなればいいなと注目しています。

また、こういった施策によって、地方から大都市に学生が流入する=地方大学が過疎化する、という視点で語られるときがありますが、これは少し違うように思います。学生は、できるだけ多様で刺激的な環境に身を置くべきです。この環境は、国内外問わず、さまざまなエリアから、さまざまな学生が集まることによってつくられます。そのため、地方から大都市に学生が流入することは、よい教育環境をつくる一因になり、抑制するべきことではなく推進していくべきことです。そして、これは地方の大学にもいえることで、地方大学の教育環境をよくするために、大都市から地方に学生がもっと流入してくるべきです。

今は、地方は地方、大都市は大都市で、学生を固定化させる流れになっています。でもこれは悪手で、地方も大都市もひっくるめて、学生がもっと自由に動けるように促していくことこそが大事です。地方大学が大都市の高校生を対象にした入学前予約型奨学金を充実させることも必要ですし、大都市の高校生が地方大学で学びたくなる理由づけ、魅力づけを、もっとやらなくてはいけません。それに大学受験にこだわらず、地方と大都市の大学間で提携して、学生を一定期間入れ替えるような取り組みがあってもいいのかもしれません。なんにしろ、社会の都合で、学生のためにならないことをするべきではないのです。入学前予約型奨学金からちょっと話が広がってしまいましたが、本当にそう思うわけです。

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