2019/08/25

共同研究ではなく共同教育を、大学の枠を越えて学問の魅力を発信する(神田外大ほか)


学問の魅力を伝えるうえで、その学問が社会でどう役立っているかを具体的に感じてもらうというのは、説得力のあるアプローチです。全国外大連合が実施する「通訳ボランティア育成セミナー」は、まさにこれを実現する場のように感じました。学問を活性化させていくうえで、このアプローチはヒントになります。

以下、大学プレスセンターより。


全国7つの外国語大学で組織される全国外大連合が8月28日~30日まで協同でボランティア育成セミナーを開催します -- 英語をはじめとした5言語で通訳・翻訳能力、異文化理解能力等を育成 
全国7つの外国語大学からなる全国外大連合(関西外国語大学・神田外語大学・京都外国語大学・神戸市外国語大学・東京外国語大学・長崎外国語大学・名古屋外国語大学)は、8月28日(水)~30日(金)まで協同で、2泊3日のボランティア育成セミナーを開催します。(後略

全国外大連合が取り組む、このセミナーは外国語を使ったボランティアを行う上でのさまざまな知識やノウハウが学べ、さらに各種スポーツ大会や国際イベントでのボランティアを紹介してもらえる「人材バンク」にも登録できるというもの。実社会で外国語を使いたい人にとっては、至れる尽くせりの取り組みです。

思うに、教える学問が「語学」と明確に決まっている外国語大学だから、大学連合というかたちで推進できるのでしょう。これが総合大学であれば、たくさんある学問の中から一つを選ぶ必要があり、なぜその学問を選ぶのか、方々に説得してまわらなくてはいけません。ましてや複数の大学で連携するとなると、ハードルがさらに増え、現実的ではありません。

単科大学ならまだしも、総合大学でやるのは、なかなか現実的ではない。でも、その学問を専門とする学部や学科にとっては、非常に魅力的で意義のある取り組みになるはずです。でもでも、一つの学部や学科だけでやるのには負担が大きすぎる……のであれば、全国外大連合のような連合組織を学部ないし学科単位で組織すればいいのではないでしょうか。

もちろん理想論です。ですが、その学問が社会にどう役に立つのかを真剣に突き詰めているのは、それを専門として研究し、教えている学部であり学科です。“たくさんの中の一つ”として捉えている人たちがリーダーシップをとってしまうと、どこかでズレが生じる可能性があります。なら、同じレベルでその学問に向き合っている人たちで、学問と社会の接点を考え、それを学生たちが体験できる場を考える方がいいように思うのです。

また、もう一段階スケールダウンして、教員レベルで連携する、というのも考えられます。研究に「共同研究」があるように、教育にも「共同教育」という考え方があってもいいのではないでしょうか。教員(研究者)にとって、自身が勤める大学の受験生が増えることは大事ですが、その学問を志す人が増えることも、同じように大事なことのはずです。

大学という枠にこだわらず、学問の魅力を発信する。大学業界全体が活性化するうえで、今後こういう視点は、さらに重要になってくるように感じます。今回、見つけた全国外大連合のセミナーは、その先駆的な取り組みの一つです。今後、いろんな連携がでてくることを期待したいです。

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