2018/08/05

異質な授業!? 自校教育の役割と魅力を考える


大学の歴史や建学の精神、創設者の生き様などについて伝える教育を、自校教育といい、これに力を入れる大学が一定数あります。正確な数はわからないのですが、それでも体感的にはじわじわと増えてきているように感じます。私が普段から情報収集でお世話になっている大学プレスセンターを見ていると、今週だけで立て続けに4件も自校教育のプレスリリースが載っていました。

以下、大学プレスセンターより。


【1件目】 京都産業大学の自校教育の科目「大学の歴史と京都産業大学」を開講。学長をはじめ、大学を構成する部局の責任者や専門研究者、京都産業大学に縁のある学内外の有識者が登壇し、内外から多角的に熱く「京都産業大学論」を語る。(後略) 
【2件目】 獨協大学が「獨協学」を開講 -- 「獨協」が持つ多様な概念を学び、自分と大学について考える教育プログラム(後略) 
【3件目】 北里大学の自校教育「北里の世界」 -- 建学の精神、創立者の理念を学生に伝える教育プログラム(後略) 
【4件目】 建学の精神 創立者の理念を学生に伝える教育プログラム -- 筑波学院大学(後略)

実は以前から、自校教育の授業で学生の興味を引くのは至難の業のように感じていました。というのも、授業というのは、根本的にはその学生のためになる知識なり技術なりを修得するためにあります。これが実感できる授業については、学生も熱心に受けます。でも、なかには、直接的には役に立たなさそうな授業もあるわけです。こういう授業は、まぁでも学問なんだし…と、学生は自分で自分に言い聞かせて、いちおうは納得して受けているように思います。

しかし、自校教育は異質で、学問ではないし、学生が興味を持ちにくい内容なうえ、学生のためになるかというと、まぁなるんでしょうが、シンプルに説明できないものの方が多いように思うのです。さらに、自校教育には“自分たちが自分たちの魅力を語る”という側面が多分にあり、大学の自己ピーアール色が強い。もう一つおまけにいうと、若人にエールを送る(という名の説教をする)老人の姿が脳裏に浮かんでくるような、上から語る雰囲気のものがよく目につきます。

保護者の視点から見ても、自校教育の充実は大してプラスに働かないように思うのです。自分の子供が愛校心を持つかどうかは、大した関心ごとじゃなく、それより語学など将来役立つ授業が充実していることの方が、よっぽど魅力に感じるはずです。場合によっては、自校教育に学費が使われることを快く思わない保護者がいるかもしれません。

後ろ向きな内容を書き連ねてしまいました…。ここまで書いておきながらなんですが、自校教育を否定しているわけではありません。パッと浮かぶ範囲で、学生ウケは悪そうだし、保護者や受験生へのアピール材料にもならなさそう、メリットが浮かんでこないんですね。こういったなか、なぜ積極的に取り組む大学が増えてきたのか、けっこう興味があります。これから大学間の競争がより激化するなかで、大学はアイデンティティをより強く打ち出していく必要があるからでしょうか。今後、注目していきたいです。

また、私個人としては、自校教育のコンテンツは、学生ウケはしにくいけれど、卒業生や広く一般の人には面白く感じるものがたくさんあると思っています。大学が生まれた背景には、創設者のドラマがあったり、日本の歴史と関わっていたりするし、歴史上の偉人が立ち上げた大学というのも少なくありません

なので、いっそ授業という枠を取りはらってしまい、学生でも参加できる公開講座として、大々的にやってみてはどうかと思うのです。これであれば、学外にも広く大学のアイデンティティを伝えられるうえ、大学ブランディングの一環にもなります。さらに、自校教育のもつ説教臭さもなくなるし、自校教育に学費を支払うなんて…と考える保護者を黙らせることだってできるはずです。自校教育の勘所をつかめていないので、もしかしたらズレた考えなのかもしれません。でも、けっこういいと思うんですが、どうなんでしょうねぇ…。

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