2018/08/11

大学って何だろう、を東京医科大の不祥事から考える(東京医科大)


日本大学のアメフト部に続いて、東京医科大学の裏口入学、さらには同大学の女性受験者の一律減点と、ここ最近、矢継ぎ早に大学の不祥事がお茶の間をにぎわかせています。今回、取り上げたいのは直近のホットな話題、東京医科大の女性受験者の一律減点についてです。受験生に告知せずにこれをやるところで論外ではあるのですが、それでも考えようによっては、考えさせられるところがある問題のように思います。

以下、朝日新聞デジタルより。

医師65%「女子減点理解できる」 人材会社ネット調査 
東京医科大が入試で女子受験生を一律減点していた問題をめぐり、医師の人材紹介会社「エムステージ」(東京都品川区)が医師を対象にアンケートをしたところ、一律減点を「理解できる」「ある程度理解できる」と答えた人が計65%に上った。ただ、理由としては「周りに負担をかけているため仕方ない」というあきらめが多く、働き方などの改善を求める声も多かったという。(後略)

医者という職業が、現段階では女性より男性の方が向いているのかどうか、というのは、正直よくわかりません。でも、そういう社会状況になっていて、業界として男性医師を求めているとします。その場合、医科大学は、あくまで公平であることを第一にするべきなのか、それとも業界ひいては社会のニーズに応えることを優先すべきなのか、これって非常にナイーブな問題なように思うのです。

教育の機会均等について述べている教育基本法第3条には、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とあります。「性別」という言葉が明確にでているわけで、ここから考えると、今回の件は完璧にNGです。

しかし、女性の方が優秀で女医ばかりになった結果、社会そのものがうまく回らなくなるのであれば、本末転倒というか、何のための大学なのだ、ということになります。私立とはいえ、相当額の公金が注がれているわけですから。

最近では、都市圏への学生集中を是正するため、東京23区にある大学の定員を抑制する法律が成立し、議論を巻き起こしました。東京医科大の件はいち大学の判断ですが、23区の定員抑制は、国が社会全体の利益を、学生が教育を受けるチャンスより優先した動きであり、やっていることの本質はそこまで変わりません。

これら問題は一つひとつを取り上げて、良い、悪い、と断じても仕方がないように思います。根本にあるのは共通していて、大学は誰のためにあるのか、何のために存在しているのかといった、そもそも論的なことです。ここに立ち返って議論したうえで、これら問題を受け止めていく、そういうプロセスが必要なように感じています。

ただ、そうは書きつつ、あくまで個人的な意見でいうなら、「社会にとっての利益」は、時代により状況により、大きく変わっていくものです。でも「教育の機会均等」は、いつの世であっても変わるものではありません。なら、後者を優先するべきではないかと思っています。「教育の機会均等」を第一にしたうえで、それが社会の不利益につながるのであれば、大学の問題ではなく、社会の問題としてとらえて解決していく、それが健全なのではないかと。

まぁ、私の意見はそれとして。受験生人口が大きく減りはじめた2018年に、大学に関わるさまざまな問題が出てきていることに、多少運命的なものを感じています。たくさんの人の視線が集まっている状況を活かし、「大学論」を皆で考えてみるのがいいのではないでしょうか。

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